第39回はご存知「なないろ文庫ふしぎ堂」店主であり、
『彷書月刊』編集長でもある田村七痴庵さんと映画『私は猫ストーカー』
原作で有名なイラストレーターの浅生ハルミンさんの異色対談でした。
このコンビじつはかつて店主とアルバイトという関係でありまして、
このたび師弟対談が実現する運びとなりました。

当日の会場、スタジオ・マーレは超満員。顔なじみの古書店主、ライター、
編集者の顔もちらほらお見かけいたします。お二人の気楽な話しぶりから
時折繰りだされる意味深な発言に会場は大いに沸きました。

また会場ではハルミンさんの書籍のほか、
ちょうどタイムリーに刊行された2冊の雑誌も販売されました。

  • 『彷書月刊』2月号の田村さんの特集号
  • 『雲遊天下』101号(復刊号) 特集・雑誌のゆくえ (田村さんインタビュー収録)

これは現在も発売中ですのでぜひお手に取ってご覧ください。

それでは岡崎武志さんのブログに当日のレポートがあります。
お借りしましたので、会場の雰囲気を味わってください。

スタッフ:広瀬

ハルミンさんは「なないろ」バイトの「志願兵だった」。つまり、お金より、古本屋そのものに興味があり、自分から手を挙げて「なないろ」に店番をした。「バイト料は安かったけど」(田村)「そんなことはないです」(ハルミン)。田村さんは人手に困ると、「美学校」へ、ブラブラしている若者を探しに行ったようだ。そこでハルミンさんが拾われる。ハルミンさんは3年ほど、週に一日、「なないろ」のバイトをするが、「私は本当に丸腰だった」(古本のことは何も知らない、の意)。この「志願兵」だの「丸腰」という表現がおもしろい。古本屋に対する熱、意気込みを感じる。

当時の田村さん。まだ三十代だが、ハルミンさんの目に映ったのは、腰まで長い髪を伸ばし、田村さん以外は誰も着ないような服に身を包んでいた。それがかっこ良かった。店番をしていると、田村さんは「それじゃあ、頼むわ」と言って外出していくのだが、外で何をしているのかがまったくわからなかったという。

田村さんが謎なら、客も謎だらけで、いつもエロ本をずっと見て帰っていくおじいさんがいた。松本清張みたいな唇のじいさんで、長時間女性の裸を見ていると、次第に耳が赤く染まっていくのをハルミンさんは見逃さなかった。バイトの先輩・タカクラくんによると「あのじいさんは、○○に住んでいて、エロ本のコレクターだよ」。「なんで、タカクラがそんなこと知ってんだ!」と田村さん。

相撲取りになれと言われる程身体の大きな小学生がいた(「私は古本ストーカー」のチラシで、電話の下でしゃがんでいるコドモ)。小三のタケオは店内に貼った上半身裸の舞踏のポスターに映ったオトコの脇毛を指差し「これ、何て言うの?」と、ハルミンさんにしつこく「脇毛」と言わせたがった。

田村さん曰く、歴代のバイトで便所掃除をすすんでしたのはたった二人(田村さんはせよ、と言わない)。するとハルミンさんが「そのうちの一人は、当時つきあっていた私の彼氏です」と言った。ハルミンさんが急きょバイトを休む用ができて、彼氏が代わって「なないろ」へ。この彼氏がまことに几帳面、綺麗好きな男で、便所を見るにみかねて掃除した。

「なないろ」に古本を持ちこむ常連にKとTがいたが、Kはプロで、いい本を拾って、ちゃんと仕分けして、いちばん高く買う古本屋へ持ち込む。SM雑誌でもある程度の量が必要で、それを駅前のコインロッカーを倉庫替わりにして溜め込んでいた。ハルミンさんはこのKさんから寒い日に暖かい缶コーヒーをもらったことがある。ハルミンさんがKさんに、どこで本を拾ってくるのか、と聞いたことがある。Kさん曰く「あのね、内幸町と日比谷あたりがいいよ」。行動範囲の広さがすごい。田村さんは毎年、このKさんから年賀状をもらっていた。しかし、宿無しなので、住所はなく名前だけ。

田村さんは「三宿の江口書店こそ古本屋のなかの古本屋だ」と言っていた。ハルミンさんも江口書店が好きで、看板の「雑本」という文字に引かれていた。まさしく江口は雑本の店だった。とびきりいいことば、かっこいいことばとして「雑本」を意識していたが、友人に江口書店のことを説明するとき、「雑本の店で」と言うと、友だちが「ええっ、雑本なんて言うの、ひどいよ」と反応があり,逆に驚いたのだ。田村さんは言う。「雑草という草はないが、雑本という本はたしかにあるんだ」

江口さんは最後、失禁しながらも店番を続けていた。おしっこもらしながらも古本屋の店番をする江口さんに田村さんは感動する。つまり最後まで「古本屋」だった。

ハルミンさんに原稿を依頼したのが田村さんで、ハルミンさんはまだ何ものでもない私に依頼するなんて、その勇気におどろいたという。ただ、現在「にわとり文庫」に嫁入りした西村博子さんと二人で、「特急電車で家出」というミニコミを作っていて、それを田村さんに見せていたらしい。

「彷書月刊」つげ義春特集号(1991年)に書いた「古書談義 古本屋さん」だが、ここにナゴヤの古本屋で教わった、下郷羊雄がサボテンばかりを撮ったシュールリアリズム写真集『メセム属』について書いた。まだ二十代の女の子が、『メセム属』について書くなんて、とここで田村さんが驚く。

田村さんは「なないろ」の二階の四畳半を倉庫兼住居にしていたが、ガス台以外、電化製品はなにもなかった。ハルミンさんは、じつは田村さんがルスのとき、こっそりこの二階を覗いている。「部屋中、本が積み上げてあって、あんなに高く本が積めるものだと感心した。部屋のまんなかにぺったんこになった蒲団が敷いてあって、小さな窓から光がさしこんでいた。小さな机の上には、かきかけの目録用原稿が置いてあった」と描写する。

このほか、まだまだ面白い話が続くのだが、最後に田村さんが吐いた名言。田村さんの住むマンションのゴミ捨て場に、ある日、リボンのかかった遺影や「忌中」という紙や葬式写真など、葬式に使う一切のものが捨ててあった。マンションの管理人は「こんなものを捨てて」と怒ったが、古本屋の田村さんとしては、一瞬「俺がもらおうかな」と思ったという。そのあとにこう言った。

「古本屋ってのは奈落と直結した商売なんだ」

――私は古本ストーカー – okatakeの日記

都築響一トークイベント

撮影:荒木一真

第三十八回の出演者は、編集者でライター、そして写真家でもある都築響一さん。現代美術・デザインをはじめ、秘宝館から洋服、現代詩、またスナックや演歌歌手等々、独自の視点から現代日本の姿を追いかける仕事を続けておられます。

開演前に、約百席の会場がほぼ満員になる盛況ぶり。中央線沿線でのイベントが少ない都築さんの登場に、会場の期待も高まります。

十七時開演。
まずはプロジェクターを使いつつ、今月出たばかりの新刊『Showa Style』の紹介から。
戦後、復興しつつあった東京や大阪で、次々に生まれていた商業建築を紹介した「建築写真文庫」(一九五三~一九七〇、彰国社)。キャバレー、ガソリンスタンド、喫茶店などの姿を集めたこのシリーズ、実は建築家・北尾春道氏がたったひとりで撮影・編集して作っていたのだとか。それを知ったとき、ここに自分の先輩がいた!と都築さんは感じたそうです。
有名建築家の建築物は、それが「作品」であるがゆえに時代を超えている。むしろ、それぞれの時代の匂いやリアリティは、無名の建築物のほうにこそ表現されているはず――そんな視点から、全百四十五巻の「建築写真文庫」を再編集したのが同書。
「日本のミッドセンチュリーモダン」とも言うべき商業建築の数々に、お客様も熱心に見入っていました。

次に一転して、話題は現代へ。
古道具屋の片隅で埃をかぶっていた素人絵画ばかりを集めた画集『Thrift Store Paintings』の驚異。二十年以上も小型バンで全国をまわり続ける歌手・秋山涼子さんの演歌人生。レーザーカラオケ機材販促のために大量に作られた、ソフトポルノ風カラオケ映像への注目。
一見脈絡のない展開のようですが、一貫しているのは、無名の人々や世間から貶められた表現が持つリアリティへのまなざしです。都築さんの姿勢にまったくブレがないことが、お話からよく伝わります。

世間からバカにされている表現の一つに、AV(アダルトビデオ)の世界がある、と都築さんは言います。次に紹介されたのは、そのなかでも、奇妙で独創的なAVを生みだすメーカーとして知られるSOD(ソフト・オン・デマンド)の作品群。大会場に集められた五百人の男女が同時にセックスする『500人SEX』、全裸オーケストラ、全裸避難訓練などの「全裸」シリーズ等々……。「実用的」なAVから限りなく遠く、ほとんどアートに近づいてしまったこれらの作品を、都築さんはクールベ『世界の起源』や現代美術作品を引きあいに出しつつ語ります。曰く「世間から公認された芸術だけでなく、どちらの表現も同じように楽しめる自由さを持てれば、人生はもっと楽しくなる」。常に無名の表現の側に加担してきた都築さんらしい言葉です。
ちなみに、SODの創立者・高橋がなり氏は、TVプロデューサー・テリー伊藤氏の弟子。なるほど、紹介されたAVの数々には、かつての「天才・たけしの元気が出るテレビ」に通じる実験精神とアナーキーな笑いが溢れていました。会場からもたびたび笑い声が起こります。

そして最後に紹介されたのが、「これまで五百回以上見たけど、そのたびに感動する」と都築さんが言う、「ドリャーおじさん」の映像です。ドリャーおじさんとは、東尋坊の崖から二万回以上も飛び込み続けた中年男性のこと。偶然、TVでその姿が紹介されたのを見て衝撃を受けたという都築さん。ドリャーおじさんの無償な飛び込みへの情熱から、「危なくてだれもやらない」「やってもバカにされる」行為に人生を賭ける潔さを教えられたそうです。笑いとともに不思議な感動を呼ぶドリャーおじさんの姿に、会場からはひと際大きな反応が起きていました。

いつもと違い休憩時間もなく続いた本イベントは、ここで終了。大きな拍手で幕を閉じました。盛りだくさんの内容と、長い時間を感じさせない都築さんの巧みな語り口に、スタッフも大いに魅了された二時間でした。
「隙間狙いで変なモノを追いかけるサブカルの人」。ときにそう誤解される都築さんの仕事が、実は時代と人間への熱い関心に支えられていることもまた、しっかりと伝わったのではないでしょうか。
来年以降も新刊を数々準備中という都築さんに、これからも目が離せません!

スタッフ:宮里

平出隆×扉野良人

第37回西荻ブックマークでは、平出隆さんと扉野良人さんをゲストにお迎えしました。

お二人はもともと多摩美術大学の教師と生徒の間柄。対談の前半はその当時の回想からはじまり、出逢うきっかけとなった詩学の授業について、共に出掛けた大学主催のヨーロッパ旅行について、お二人にとっての旅することと書くことを巡る姿勢についてなど、ときにユーモアを交えながら語り合っていただきました。とりわけ印象的だったのは、これを師弟対談と名しているが実は師は扉野さんであった、ということ。その証拠に、扉野さんは平出さんに、折にふれて「この本を読むように」と入手した本を進呈されていたそうです。ヨーロッパ旅行の際には、扉野さんがローマの古本屋でエズラ・パウンドの豆本を見つけて平出さんに手渡したことがあったそうで、お二人ともそのことをしみじみ述懐されていたのには類い稀なる美しい師弟関係の一端を見た気がしました。

休憩をはさんだ後半では、現在平出さんが執筆中の新作(『鳥を探しに』12月発刊予定)や扉野さんがゼミ時代に制作した冊子などについて話題が展開し、これからの本の流通のあり方にも言及される刺激的な一幕もありました。また、扉野さんがかねてからたずねたかったという『荒地』の詩人に関する記憶も、平出さんから披露されました。平出さんはその殆どの詩人と相対した機会をお持ちですが、曰く、総じて『荒地』の詩人たちは「投げやり」で「非権威的」であった、と仰ります。扉野さんはじめ客席のみなさまにも特に興味深いお話だったのでは、と感じられました。

しかし、この対談のハイライトは、なんといってもお二人が紡ぎ出す言葉と言葉のあいだに、いくたびも沈黙がおとずれたことではなかったでしょうか。2時間という限られた時間のなかで、ともすれば流れを寸断してしまうはずのこの沈黙は、お二人のあいだではもっとも豊穣な「対話」だったように思えます。例えば大げさに言えば、そこに産み落とされた沈黙とは、偉大なる画家セザンヌが制作のプロセスのなかでキャンバスに出現させた「余白」に匹敵するものですらありました。それを目撃することになった私たちの、なんと幸福であったことか……。

お二人は、師弟の枠をこえ、いずれまたどこかで仕事を共にされることがあるでしょう。今回の西荻ブックマークは、その貴重な仕事の誕生を予感させるに十分なものだったように思います。
最後に、平出隆さん、扉野良人さんのゲストのお二人、ご来場くださった方々、スタッフの方々、その他関係してくださったすべてのみなさま、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

スタッフ:鹿角

えのきどいちろう&北尾トロ

第36回の西荻ブックマークは、4箇月ぶりになるスタジオマーレでの開催でした。

出演はコラムニストのえのきどいちろうさん、進行役はわれらが北尾トロさんです。

「こんなに密集した空間でトークショーをするのははじめて」とはじめは若干緊張気味だったえのきどさんは、みずからの提案で、客席の最前列に座っているお客さんも交えてちょっとしたゲームをして、まずは場をなごませ、御自身もリラックスされます。
ゲームにはスタッフも協力しました。

場がなごんだところで、えのきどさんのこれまでのコラムニストとしての、経歴やお仕事ぶりが、北尾トロさんの絶妙な相の手とあいまって、なめらかに独特なやんわりした語り口でもって、くりひろげられてゆきます。
もっともコラムの仕事の本数をかかえていたころのお話など、えのきど節が余すところなく発揮されておりました。

前半の最後では、えのきどさんの過去のコラムが朗読される一幕も。
子供向けのゲーム雑誌に掲載されたというそのタイトルは「月」。
そこはかとなく、生きることの悲しみを底辺にひそめながらも、夜の公園のベンチを照らす月に勇気づけられるような、これまたえのきどさんの別の一面をのぞかせるようなコラムでした。

さて、後半は、北尾トロさんからの重大発表からはじまりました。
この場にいるみなさんにもぜひ積極的に意見を聞かせてほしいとのことです。

この企画をだれかに話すのもこの場がはじめてというまさしく貴重な瞬間であります。

さて、企画の具体的な内容については、残念ながら、まだこの場では発表できません。遠からず、北尾トロさんから、なんらかのかたちで正式な告知があるかと思います。
そのときまで、期待して、お待ちくださいませ。

企画の話は大いに盛り上がり、終了の予定の時間を30分以上過ぎてもなお、決着がつきませんでした。

興奮冷めやらぬまま、話しあいの場は打ち上げの2次会へとそのまま持ち越されました。
2次会の場所は、西荻南口のタイ料理のお店「ぷあん」。ここで車座になって、輪になって熱をこめて語りました。

毎度思うことですが、西荻ブックマークのイベントの打ち上げは、出演者とお客さん、スタッフの距離が近く、この夜もなごやかないい雰囲気のまま、宴は深夜にいたるまでつづきました。

スタッフ:添田

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10月8日(木)20時より西荻窪カムラッドにてミーティングを行いました。

通常のミーティングは、北尾トロさんの事務所をお借りして行っているのですが、今回は約1年半ぶりのディナーミーティング! 新メンバーを含む13名のnbmスタッフが集合しました。

この日はnbmの今後の運営方針を中心に活発な議論が。
有志による本にまつわる小さなマンスリーイベントとしてスタートした西荻ブックマーク。今年、3周年を迎え、これからもさらに長く続けていくためには何が必要なのか?を考える話し合いが行われました。

そういえばnbmグッズって作ってないよね……?という提案なども。そうそう、nbmグッズはぜひ作りたいですね!

そんな感じで西荻ブックマークは来年春以降も続いていきます。
今後の西荻ブックマークもどうぞお楽しみに! スタッフも引き続き募集中です!

スタッフ:木村カナ

『KAWADE道の手帖 尾崎翠 モダンガアルの偏愛』『第七官界彷徨』の二冊の刊行記念イベントとして開催された第34回西荻ブックマークは、尾崎翠が東京で作家活動をしていた1920-30年代に焦点をあて、「モダンガール」としての尾崎翠を、その時代の音楽・映画・海外文学の受容など様々な角度から浮かび上がらせるという試みでした。


2525稼業

第一部はachacoとsaraの歌のユニット2525稼業のライヴ演奏。キャンディー・カラーの色違いのサンダル、胸には大きな蘭の花を付けて真っ白な衣装に身を包んだお揃いのコスチュームが何とも可愛らしい! 作詞作曲を手がける高橋裕氏のアコースティックギターにのせて二人の透明感のある唄声が会場一杯に響き渡ります。今回は特別に創樹社版の全集月報に掲載されている『歩行』の詩をアレンジした曲や小野町子にちなんだ『小町』、樋口一葉の『にごりえ』など翠文学を想起させる曲の数々を聞かせてくれました。また、『東京行進曲』をはじめ、二村定一やエノケンのメドレーなど、尾崎翠もきっと口ずさんだであろうモダン都市・東京の流行歌を、懐古調ではなく斬新なアレンジとたのしい楽器とで現代のポップスとして甦らせる手腕は2525稼業ならではのもの。会場からは大きな拍手が贈られていました。


第2部

第二部は西荻ブックマークのスタッフでもあり今回の企画を担当した木村カナさん、第一部で素敵な唄声を披露したachacoこと平山亜佐子さん(戦前不良少女研究家という肩書きも!)、アメリカ文化を専門に翻訳・批評・演劇など幅広い分野で活躍されている小澤英実さんによるトークセッション。

The Modern Girl Around the World

まず、話題は「モダンガール」という言葉をおさらいするところから始められました。日本において最初にこの言葉を使ったという北澤長梧(秀一)「モダン・ガールの表現――日本の妹に送る手紙」を木村さんが紹介するとともに、小澤さんと平山さんが補足として同時代的に発生した「モダンガール」という現象をゼルダ・フィッツジェラルドやクララ・ボウなどの例を挙げながら言及されていました。政治的でアクティヴィストとしてのNew Womenとファッションや性的魅力(=イット)に重きを置くModern Girlの違いについての小澤さんの話が印象的で、紹介されていた”The Modern Girl Around the World”という本もかなり気になります。

モガモボ狩り新聞記事

また、断髪洋装の「モダンガール」が略語の「モガ」になるとネガティヴなイメージで語られるという話も。その一例として平山さんが挙げられたのは、当時の新聞記事の見出しで「モガ」=「不良」という図式が読み取れるというもの。クロシェ帽を目深に被ったモダンガール・尾崎翠が不良モガ「ガルボのお政」と新宿武蔵野館という同じ空間で映画を楽しんでいたかもしれない、という空想は私たちをわくわくさせてくれるに十分です。

尾崎翠スライドグレタ・ガルボ/長谷川泰子スライド

そして、今回のイベント名にもなっているキーワード、グレタ・ガルボについての話題もありました。代表作『第七官界彷徨』を執筆していたころの尾崎翠は、グレタ・ガルボを気どって黒い洋装をし、断髪した赤いちぢれ毛で肩を怒らせて闊歩していた、文字通りのモダンガールだったという大田洋子の回想を紹介。また、同じ頃、中原中也と小林秀雄の恋人で「グレタ・ガルボに似た女」と呼ばれた女優・長谷川泰子についても写真とともに紹介され、同時代のモダンガールとしての二人の対比も興味深いものでした。

海外文化の安易な模倣が巷に溢れ、それを享楽のうちに受容していたモダン都市・東京。1920-30年代の東京で花開いたモダン都市文化の模倣をめぐる狂躁ぶりは、現代から考えるといくぶん滑稽にさえ思えますが、尾崎翠に「私の生涯には、ひとつの模倣が偉きい力となつてはたらいていはしないであらうか」と呟かせたのは、まぎれもなくこの時代の空気であったのではないでしょうか。

m.k.

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山王書房は、東京・大森で1953(昭和28)年に開店し、店主・関口良雄さんの逝去のため1977(昭和52)年に閉店した古書店。尾崎一雄や上林暁、野呂邦暢ら、大森近在の文学者に愛された伝説的なお店です。

関口良雄さんがご自身の還暦の節目として、それまでに書きためた文章をまとめたのが、随筆集『昔日の客』。小部数の出版だったため現在では入手困難な本ですが、その文章の素晴らしさから、知る人ぞ知る「幻の名著」です。

第33回のメイン出演者は、山王書房店主・関口良雄さんのご子息で音楽プロデューサーの関口直人さんと岡崎武志さん。
この本が「文庫化されてだれもが読めるように、みんなで声をあげて応援していきたい」という岡崎さん。関口さんとともに、その魅力を存分に語っていただきました。

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関口直人さんと岡崎武志さん

17時開演。あいにくの雨にもかかわらず、熱心なお客様で会場は満席です。
メイン出演者のおふたりの横には、在りし日の関口良雄さんの写真が飾られています。

本の完成前に関口良雄さんが亡くなったため、直人さんがあとがきを書くことになったいきさつ。
直人さんの結婚式当日、出来上がった本が式の会場に届けられていた感激。
直人さんの誕生日が2月19日で、『昔日の客』もちょうど219ページだった偶然。
式の集合写真を撮影する直前、どこからか銀杏の葉(関口良雄さんの俳号が銀杏子)が1枚、直人さんのもとへ舞い落ちてきた不思議……。
淡々と語られる、まるで小説のようなエピソードの数々に、会場からは感嘆の声があがります。

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朗読する直枝政広さん

休憩をはさんだ後半には、シークレットゲストのミュージシャン・直枝政広さん(カーネーション)が登場。『昔日の客』の一部を朗読してくださいました。
幅広い趣味を持ち、渋い本読みでもある直枝さん。長年探していた『昔日の客』が、以前からお知り合いだった関口さんのお父上の本であることは、数年前、偶然知ったのだとか。

ちなみに、先月、関口良雄さんの33回忌を迎えられたそうですが、なんと西荻ブックマークも今回が第33回! ここにも不思議な偶然が生まれていたのでした。

客席には、石神井書林・内堀弘さんやライター・荻原魚雷さん、天誠書林・和久田さん(中学生のころから山王書房に通っておられたのだそう)の姿も。途中で、それぞれ『昔日の客』の魅力や関口良雄さんの思い出を語ってくださいました。お三方ともに、関口良雄さんの文章と人となりに敬愛の念を抱いていることがよく伝わってきました。

その後は、山王書房についての資料集「風狂の人・山王書房店主関口良雄」を編纂された萩原茂さんもトークに参加。関口さんと岡崎さんのリラックスした語り口のおかげで、会場は終始なごやかな雰囲気に包まれていました。

西海孝『空を走る風のように、海を渡る波のように』

関口直人さんが全作詞をしているCDアルバム
西海孝『空を走る風のように、海を渡る波のように』


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最後には、関口直人さんが持参されたギターで、関口良雄さんが遺した詩に曲を付けた歌を披露。大きな拍手のなか、イベントは幕を閉じました。

来場されたお客様には、萩原さんのご好意で「風狂の人・山王書房店主関口良雄」がプレゼントされました。手軽に『昔日の客』が読めるようになる日まで、この本で関口さんの業績をしっかり「予習」しておくことができますね。

ほとんどの方が未読だったと思いますが、それでも「昔日の客」の類を見ない面白さは、お客様に十分伝わったのではないでしょうか。
出演者のみなさん、ご協力いただいたみなさん、お越しくださったみなさん、ありがとうございました。

次回からの西荻ブックマークも、どうぞよろしくお願いいたします。

スタッフ:宮里

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第32回のメイン出演者はnbmスタッフでもある古書店「音羽館」のご主人、広瀬洋一さんです。
西荻ブックマーク3周年を記念して、料金も1,000円ぽっきりです(いつもは1,500円)。
シークレットとして、伏せられていたゲストは岡崎武志さんでした。

17時。開演。
会場の出演者席の左右には、ホワイトボードとプロジェクターがそれぞれ設置されています。ホワイトボードには広瀬さんがトークの種として用意しておいた単語が、16分割のマス目に挙げられています。

はじめは緊張気味にお話しされていた広瀬さんも、隣に座られている岡崎武志さんの絶妙な相の手と、適切なフォローによって次第になめらかなトークになり、会場の雰囲気もそれにつれてなごやかなものとなってゆきます。

会場にお越しになったお客さんに将来、古本屋さんになりたいという希望を持ったかたが、何名かいらっしゃって、これには広瀬さんもびっくりされていました。

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古書店をはじめる前の広瀬さんの略歴、音羽館が開店するまでの秘話などが、プロジェクターに当時の貴重な写真が映し出されながら、披露されてゆきます。
音羽館のマスコットキャラクターである、「おとわちゃん」も紹介されます。

休憩をはさんで後半からは、古本の値づけの実際がおこなわれます。古本を持ってこられたお客さんの本をその場で広瀬さんが値段をつけます。古本の価格はどのような基準で決めるのか、岡崎さんの経験談もはさまれながら、興味深いトークがくりひろげられます。
中央線沿線のほかの有名な古書店とのつながりも披露されます。

そのあとは質疑応答。みなさん、積極的に手をあげられます。
熱が入るあまりに、広瀬さんがホワイトボードに図を書いて説明される一幕も。

最後には北尾トロさんから、高遠本の家プロジェクトや夏開催予定のイベントの告知が行われました。

特製おみやげとして告知されていたのは音羽館店内BGM集CDでした。
これでいつでも、あたかも音羽館にいるかのような気分が満喫できますね。

最後になりましたが、ゲスト出演してくださった岡崎武志さん、ご協力いただいたみなさん、お越しくださったみなさん、まことにありがとうございました。

今後の西荻ブックマークもよろしくお願いいたします。

スタッフ:添田

第32回西荻ブックマーク、盛況のうちに終了いたしました。
ご来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

シークレットゲストは岡崎武志さん、
特製おみやげは音羽館店内BGM集CDでした!

当日の様子などはあらためてご報告いたします。

【重要:当日の会場で古書買取を受けられたお客さまへ】
買取代金を受け取られずに閉演後すぐにお帰りになったお客さまがいらっしゃいました。買取代金をお支払いいたしますので、たいへんお手数ですが、古書音羽館(03-5382-1587、杉並区西荻北3-13-7)にお問い合わせの上、ご来店ください。

【5/30追記】
該当のお客さまが音羽館に無事ご来店&買取代金を受け取られたとのこと。わざわざどうもありがとうございました。

スタッフ:木村カナ

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