第98西荻ブックマーク 岡崎武志還暦記念トーク&ライブ レポート

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5月6日(日)
岡崎武志さんの還暦記念トークイベントが「こけし屋」別館で行われました。
受付前から並ぶお客さまもいらして、開演時間の16時にはほぼ満席となり、
外よりも熱気があるかのような会場で幕は開きました。

このブックマークに今まで17回も登壇してくださっている岡崎さん。
進行役の広瀬が過去の登壇回を簡単に振り返り、いよいよ岡崎さんのご登場。
還暦祝いの赤いちゃんちゃんこと頭巾がお似合いです。

 

【第一部】最初の対談のお相手は、京都の善行堂店主で高校時代からの親友、
山本善行さん。3/28早生まれの岡崎さんより山本さんが数か月早く生まれたそうで
「彼が生まれた時には僕は、首がすわっていた」というお話で会場を和ませます。

先日、善行堂より出版された岡崎さんの詩集「風来坊 ふたたび」や、
当日お客さまに配布した冊子についてなど楽しいお話は続きます。
そのあと荻原魚雷さん、古ツア・小山さん、夏葉社・島田さんが加わり、
岡崎さんと出会ったときのエピソードなどお話しいただきました。

~特におもしろかった話しをひとつ~
京都宝ヶ池のブックオフで岡崎さんは愛用するトートバッグを
「預かっといて」とレジカウンターの店員に預けました。
そのトートバッグには旅行中の生活用品と数冊の本が入っていたそうです。
レジに戻ってみるとなんと「50円」と言われたそうな。
会場は大爆笑! 店員は勘違いして査定したらしいのですが、
普通、わかるやんなと壇上で突っ込みがはいり、
更に会場が笑いに包まれていきました。

 

【第二部】トークの後はスライド上映。岡崎氏の秘蔵写真が映し出されていきます。
天牛書店創業者とのツーショット、パリの古本屋に行っても均一台を眺めている写真、
不忍ブックストリート第1回に出店した写真。この時持っていった本は完売し、
近くのブックオフに補充本を買いに走ったそうです。みちくさ市の写真も。
他に庄野潤三氏のご自宅に行った時、上林暁邸を訪れた時の写真、
守口高校同窓会の写真など、岡崎さんの傍らにはいつも古本があったことがよくわかります。

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【第三部】トリはゲストの世田谷ピンポンズさんのミニライブ。
オリジナル曲や、岡崎さんの「風来坊 ふたたび」の詩にピンボンズさんが曲をつけ、
アコギ一本で熱唱してくださいました。歌の合間のMCも面白く目も耳もステージから離せません。
鳴り止まない拍手にこたえアンコールもありました。

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【サプライズ!】楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
ふたたびちゃんちゃんこ姿で登場した岡崎さんの前に「こけし屋」の大きなケーキが!
ロウソクを吹き消すとシャッターチャンス、みなさんがどっと前に集まりスマホを構えます。
ケーキカットのあいだ、古本道の門下生、あの角田光代さんのお祝い動画が花を添え、
角田家の愛猫トトちゃんのやんちゃぶりに会場がほのぼのします。
ほどなく人気ロックバンド、カーネーションの直枝政広さんも登場、
直枝さんによる高らかな「乾杯!」の音頭に続き、みなさんに特製ケーキが振る舞われます。
最後にお約束、岡崎&善行コンビによる大抽選会(もちろん古本がほとんど!)。
お客さまにプレゼントが行き渡ったところで、和やかで盛大な還暦祝いの会はお開きとなりました。

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ご来場ありがとうございました!(第80回西荻ブックマーク 『戦後出版クロニクル』編集会議 この本は見逃せない! 1970~2010)

第80回西荻ブックマーク

南陀楼綾繁さん、北條一浩さん、井上理津子さん、夏葉社・島田潤一郎さん。

第80回西荻ブックマーク

公開会議終了後にビリヤード台の上に並べられた候補本の数々。
来年の刊行を楽しみに待ちましょう!!

ご来場ありがとうございました!(第81回西荻ブックマーク 『古本屋になろう!』 アフターアワーズ ~「古ツア」さんと共に語る~)

第81回西荻ブックマーク
吉祥寺の古本屋「よみた屋」さんが『古本屋になろう』という本をつい先日刊行され、その出版記念のトークとして、よみた屋さんと更にはゲストとして古本屋ツアー・イン。ジャパンこと小山力也さんをお迎えしてブックマークでお話しをして頂いた。
この書名からまずは説明をして頂く。古本屋になりたい人がどうやったら経営できるかという本である。古本屋の入門書としては志多三郎『街の古本屋入門』や『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』(北尾トロ)などがあるが、精神的なものが多い。古本屋はこんなにしんどい商売であるなど古本屋の日常に関して主観的に書かれたものが多い。
一方、よみた屋さんの本は古本屋の仕事を物理学的、経営学的観点から捉えた入門書である。他の店主さんたちはこの本に書いてあるようなことまでやってないと言われることが多いという。だが、本当は皆、やっているのだ。全部をやっている人は少ないにしてもある程度まではやっている、それも無意識に。その無意識にやっている作業を言語化して書籍にしたのが今回の『古本屋になろう』なのだ。どれかは自然にできる。その自然にできない部分を参考にしてもらえればとおっしゃるよみた屋さんにはこの本の中級編というか続編をぜひお願いしたい。

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ご来場ありがとうございました!(第79回西荻ブックマーク「リアリティとは生きた証」 ~『井田真木子著作撰集』刊行記念トークショー)

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午後4時半開場、5時開演。開演の時点で、会場はほぼ満席です。客席はリアルタイムでの井田真木子読者の世代と、後追いの若い世代が半々といったところ。
生前の井田さんと面識はないという、北沢さん、北條さん、清田さん。
実は三人ともに、作家・井田真木子との出会いは遺作『かくしてバンドは鳴りやまず』だったとか。そこから著書を遡って読んでいく過程で気づいた初期~晩年にいたる文体の変化と、試行錯誤の末にたどりついた『かくしてバンドは~』のスタイルについて…と話題は進みます(「この作品で新しい文体を獲得した井田さんは、次へ進もうとした矢先にいなくなってしまった」北沢さん)。
北條さんは、井田さんが詩を書くことから出発した点に着目、若き日の井田さんが寄稿した詩誌「無限」を持参してくださいました。著作撰集にも一部収録された詩集『雙神の日課』とともに、井田真木子の知られざる原点が垣間見える貴重な資料です。
一方北沢さんは、井田さんが大学卒業後、早川書房に勤務していた経歴に触れます。井田さん在籍時(70年代後半)の同社は、海外ノンフィクションを盛んに翻訳刊行していた時期でした。このことが、井田さんの仕事に影響を与えているのではないか? なるほど、『かくしてバンドは~』では、会社員時代に出会った『さもなくば喪服を』(L・コリンズ&D・ラピエール)の鮮烈な記憶が語られていました。
また井田さんの文章には、並び立つ二者を登場させ、そのうちの一方へ思い入れていく特徴的なスタイルがある、とも(K・バーンスタインとB・ウッドワード、長与千種とライオネル飛鳥など)。いずれも、著書を読みこんだ人ならではのハッとさせられる着眼点です。
そして、『井田真木子著作撰集』の編集・発行人である清田さんは、井田さんのご両親とのやりとり(お父様は見本ができる数日前に亡くなられたそうです)や、担当編集だった方たちの反応(「どなたも井田さんの思い出を次々語ってくれました」…)等、本が出来上がるまでについて、版元ならではのエピソードを交えて語ってくださいました。
印象的だったのは、井田さんが知人たちへ、互いに内容が食い違う話を語っていたという事実です。たとえば、「自分が聞いた話では、井田さんの本名は真木子ではなく槇子だとか」と北條さん。それを聞いた清田さんが井田さんのお母さんに確認したところ、そうした事実はなく、本名は「真木子」で間違いなかったそうです。
井田さん本人が発信源と思しい真偽不明の噂がいくつも残されていること。ここからわかるのは、井田さんが本来的に「物語る人」だったことだ(「たとえば寺山修司のように」)、と北沢さん。議論は「綿密な取材に基づき、主観を排し、事実のみに立脚して、ある事件や現象を描く」とされる従来のノンフィクションと、井田真木子の手法の違いへと続いていきました。
もう一点、北沢さんの発言で興味深かったのは、出世作『プロレス少女伝説』についての指摘です。曰く、『プロレス少女伝説』は「サブカルチャーを題材にしたはじめての大宅壮一賞受賞作だった」。しかし、それ以降、同路線の受賞作が出なかったことが、その後の日本のノンフィクションを狭いものにしてしまったのではないか? 北沢さん自身の仕事への姿勢に支えられた説得力ある言葉でした。
途中休憩をはさみつつ、2時間超のトークはここで終了。さまざまな方向に話題が広がる(そこからさらに議論が発展しそうな)中身の濃い時間となりました。
清田さん曰く、「本の売れ行き次第では、著作集の続刊も作りたい」とのこと。井田さんが残した作品の数々は、読み継がれるべきリアリティを今も失っていません。この日来てくださった方々にも、その魅力はしっかり伝わったのではないでしょうか。
今回の本には入らなかった『小蓮の恋人』や『十四歳』が読める続刊が、ぜひ実現してほしい。そのためにも、『井田真木子著作撰集』がいっそう多くの読者を得るよう、心から祈ります。

(宮里)

追記/今回は特別に、北沢さん、北條さん、清田さんからコメントをいただきました。

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ご来場ありがとうございました!(第78回西荻ブックマーク《伊福部昭 生誕100年「時代を超えた音楽」》)

第78回西荻ブックマーク

〈伊福部昭=祈りと蛮性の音楽〉

 第78回の西荻ブックマークは木部与巴仁(きべ・よはに)さんをお迎えしました。著書『伊福部昭の音楽史』刊行記念と伊福部昭生誕100年記念のイベントです。伊福部昭の音楽とは? これに真正面から挑む会となりました。
 木部さんは伊福部の70年以上に及ぶ創作活動を4つのピークに区切り、各々の時代の代表曲を、音源を交えながら解説してゆきます。ターンテーブルの操作をしながらお話をされるスタイル、これぞまさにDJ(ディスク・ジョッキー)のようでした。 伊福部と親交のあった木部さんの説得力ある語り口、またレコードならではの厚みのある音質に、参加した方々も徐々に引き込まれていったようでした。
 また若き日に影響を受けたストラヴィンスキーや、親友であり良きライバルでもあった早坂文雄(七人の侍)の音楽も聴け、伊福部の理解に役立ちました。特に今年同じく生誕100年を迎えた早坂の才能をお忘れなくとのメッセージが心に響きました。
 特別ゲストの根岸一郎さんは予定には無かった歌声を、ほとんどアカペラで披露していただきました。伴奏の無い素のままの声は、かえって勇壮さと厳粛さを感じさせます。その内驚くべきことに木部さんご自身も根岸さんと一緒に唱和され、二人の歌声が昭和元年創業のビリヤード場に響き渡り、時間も空間も忘れさせてくれるようでした。
 このように八面六臂の木部さん、そして温かくて張りのある美声の根岸さん、お二人の伊福部昭への深く熱い想いが、私たちにも確実に感染いたしました。伊福部昭の祈りと蛮性の音楽は時代を超えて私たちに届いたのです。

(音羽館・広瀬)