ご来場ありがとうございました!(第78回西荻ブックマーク《伊福部昭 生誕100年「時代を超えた音楽」》)

第78回西荻ブックマーク

〈伊福部昭=祈りと蛮性の音楽〉

 第78回の西荻ブックマークは木部与巴仁(きべ・よはに)さんをお迎えしました。著書『伊福部昭の音楽史』刊行記念と伊福部昭生誕100年記念のイベントです。伊福部昭の音楽とは? これに真正面から挑む会となりました。
 木部さんは伊福部の70年以上に及ぶ創作活動を4つのピークに区切り、各々の時代の代表曲を、音源を交えながら解説してゆきます。ターンテーブルの操作をしながらお話をされるスタイル、これぞまさにDJ(ディスク・ジョッキー)のようでした。 伊福部と親交のあった木部さんの説得力ある語り口、またレコードならではの厚みのある音質に、参加した方々も徐々に引き込まれていったようでした。
 また若き日に影響を受けたストラヴィンスキーや、親友であり良きライバルでもあった早坂文雄(七人の侍)の音楽も聴け、伊福部の理解に役立ちました。特に今年同じく生誕100年を迎えた早坂の才能をお忘れなくとのメッセージが心に響きました。
 特別ゲストの根岸一郎さんは予定には無かった歌声を、ほとんどアカペラで披露していただきました。伴奏の無い素のままの声は、かえって勇壮さと厳粛さを感じさせます。その内驚くべきことに木部さんご自身も根岸さんと一緒に唱和され、二人の歌声が昭和元年創業のビリヤード場に響き渡り、時間も空間も忘れさせてくれるようでした。
 このように八面六臂の木部さん、そして温かくて張りのある美声の根岸さん、お二人の伊福部昭への深く熱い想いが、私たちにも確実に感染いたしました。伊福部昭の祈りと蛮性の音楽は時代を超えて私たちに届いたのです。

(音羽館・広瀬)