ご来場ありがとうございました!(第55回西荻ブックマーク「古本屋のなりかた教えます」)

第55回西荻ブックマーク

第55回西荻ブックマーク「古本屋のなりかた教えます」
よみた屋の澄田氏が2時間たっぷりとお話して下さいました。
会場は約60人がひしめく賑わいで、しかも都内だけではなく、千葉・埼玉・神奈川と、近隣の県からもご来場頂き、古本屋をやろうという人たちの意気込みが感じられました。
澄田氏は高原書店で働いた後、1992年独立。新刊書店をライバルに考えたというのが、他の人とは、一味違うな、と感じました。
西荻でまず、開業し、現在の吉祥寺へ。
中央線一といってもいい広さを誇るよみた屋。
聞き手は同じ高原書店出の広瀬氏で、普段、なかなか聞けないお店の話を小出しに聞けたのが興味深かったです。
古本屋にとって、新刊が売れなければ、古本にはならないということで、まずはざっと、新刊書店の流通の仕組みから説明していく。
委託・再販制度を軽く説明し、ISBNについても分りやすく説明。
次に古本屋にとって、何が一番重要かといきなり、核心をついたお話をされました。
それは仕入れだと。
他の古本屋さんも口をすっぱくして私に
「仕入れだよ、仕入れが大事!」
とことあるごとにおっしゃってました。
仕入れでは、どこにでも、コンビニにでもあるような、もより品(日用品)タイプではなく、買いまわり品(デパートの品のようなよそいきのもの)や、専門品(そこにしかないもの)を扱うことが必要、と語られました。
仕入れのパターンとしては、まず古書組合の市場(交換会)。
次に同業者。よその古本屋やブックオフなどでの仕入れがこれに該当する。
3つ目が一般客からの買取。出張買取は大量仕入れの可能性があるから、私も積極的に、これはやっていかねば、と肝に銘じる。
一坪1,000冊置くとして、10坪だと10000冊。その冊数で、ひと月3000冊を売るのは難しい、と、具体的に数字を用いて、説明してくれるのがありがたい。
ぼんやりとしたイメージが具体的なイメージへと変わっていく。
10坪くらいで古本屋をやろうと思っている人には、まさにぴったりの用例だし、そうでない人は、倍にしたり、半分にしたりすればいい。
売上の2割を利益だとする。そう、売上全てが、自分の収入になればいいが、家賃・人件費・光熱費・仕入れ代などの経費を全部引いて、残るのが利益。
一月にどのくらい、稼ぎたいのか。
300,000円だとすると、500円の本を3000冊売って、1,500,000円。
数字で説明されるとクラクラしてくる。
が、自分が飛び込んだ商売は、そういう世界なのだ。
買取の値段についても具体例で説明してくださいました。
1000円で値付けした本が10冊あるとする。
1年後に、7冊が1000円で売れ、残り3冊はセットで1000円で売れたとしたら、合計8000円の売上。
買取する時、売値を想定して、その金額からいくらか安い金額にするが、値下げしたときのことまで念頭においておかなければいけないのだ。
実際に、いくらで売れるのかということが大事。お客さんは選んで買う。選ばれない本、犠牲になる本もある。
よみた屋では、商品のバーコードをスキャンすると、アマゾンと日本の古本屋の価格が出るように設定しているらしい。
すごい! ほしい!と思ったが、レジさえ、ない古書ますく堂であった。
メタメッセージについても勉強になりました。
読んでない本を新刊書店で何故、選べるのかと。
自分の好きな得意な分野だと、読んでない本でも
「これ、面白そうや」
とアタリをつけて買う。
それを得意でないジャンルでもできるようにならなければいけない。
自分の相場観を持つことが大事。
これは将来、価値が、上ってゆくのか、下ってゆくのか。
著者を見ただけで、弟子や師匠は誰か、その本の歴史的な意味づけ、など。
一朝一夕でできることではない。
販売とはいらないものを、欲しがらせることと言われ、
「え? 欲しいものではないの?」
と思っていたら、更に説明が続く。
人は「何かほしい」と思っている。要はその欲求を刺激することが大事で、商品をいかに見せるかにかかっているのだ。
このあたりはもっとお聞きしたかった部分。
取引コストという聞きなれない言葉も以下の説明で、すとーんと納得できる。
スーパーよりペットボトルの値段が高い自販機。それは自販機だと24時間、すぐに買えるから高めなのだ。
3000円の本があるとする。昔はその本が他の店で、いくらするのか10時間くらいかかって、やっと分るような時代だった。これが取引コスト。
10時間もかかって調べるくらいなら、ここで買おうとなる。それが、今では、ネットですぐに他店の価格が分り、価格競争となる。
今から古本屋をやろうとしている人たちに、これまた為になる話をされた。
15坪の店として、1坪2万円として、家賃が300,000円。
新築の場所だと、内装などを、一からやらないといけないから高くつく。
前に店舗か事務所をやっていた所を借りると、安くつくと助言。
開業した頃の苦労話などは、とても参考になるから、いくらでも聞きたくなる。
会場からの質問では、新規開業資金はいくらかかったかといった質問や、電子書籍にたいしての質問が飛び交う。
やぶれかぶれの古書ますく堂も前に来いといわれ、本の値づけがわからないと質問する。知らない本だと値段がさっぱりわからず、ネットで検索すると、自信がないからすぐ、ぶれてしまうのだ。そういう意味でも自分の相場観を持つことが大事なのだな、と思いました。
このトークが始まる前に、澄田氏にセレクトショップではなく、澄田氏の提案する発展型書店でやるにはどうすればいいのか、と質問をしました。
自分がセレクトするのではなく、お客さんに勝手に探してもらう。一般から買取し、扱ったことがないものを取り入れ、棚を交通整理しておく。
セレクトショップは一点かぎりのものが殆どで、むしろ減らしてゆくことで、セレクトしてゆくマイナスの論理である。
そして、店主の人格を売るからこそ、他より、高い価値がつく。
澄田氏には古本屋入門書を出版してほしいな、と、改めて思いました。

増田(古書 ますく堂)


ご来場ありがとうございました!(第54回西荻ブックマーク「本と怠け者と働き者」)

第54回西荻ブックマークの出演者は、9月上旬に初の文庫本となる『本と怠け者』(ちくま文庫)を出されたばかりの荻原魚雷さんと、その巻末解説を書かれた岡崎武志さん。
魚雷さんとは十数年来の知り合いである岡崎さんの巧みな進行のもと、魚雷さんの知られざる素顔が次々と明かされていきました。
まずは、魚雷さんの新刊『本と怠け者』の紹介から。
『ちくま』に連載していた当初は、怠け者をテーマにしていたわけではなかったそうですが、連載を振り返ってみると“怠け者”や“アル中”など“社会不適応”の作家の割合が多かったとのこと。
「作家の育った環境・境遇がその作風に与える影響について興味があります。山田風太郎が『人生の色調』と言っているんですが、彼の作品にも両親を早くに亡くしたことで得た視点が表れているように思います」

という魚雷さんのお言葉が印象的でした。

岡崎さんのリクエストで、『本と怠け者』にも引用されている石原吉郎の『世界が滅びる日に』を朗読する一幕も。
話題は一転して、魚雷さんの仕事観やユニークなアルバイト歴の話に。
「接客業は無理。『いらっしゃいませ』『ありがとうございます』を愛想よく言える人を尊敬する」
「図書館のデータ入力作業は天職だと思った。やっているうちに無の境地になれる。しかも、ノルマを終えた後は本を読み放題」
など、次から次に飛び出す魚雷さん節に会場からもたびたび笑い声が起こります。
その後も、酒好きになったきっかけについて、上京した頃のエピソードについて、22年間住んでいる高円寺での引っ越しについてなど、お二人のトークは淀みなく続きました。
休憩を挟んで後半は、お二人が持参した古本をご紹介していただくとともに、西荻漥の古書店「音羽館」でお二人がセレクトした均一本や直筆の色紙が抽選で配られました。
魚雷さんが色紙に認めた一言があまりに魚雷さんらしいので、ここに引用させていただきます。

ここではない どこか遠くへ行きたいが
どこか遠くに行くのは面倒くさい
即売会で大いに盛り上がった後は、東日本大震災後の話に。
震災当日は京都に出かけていたという魚雷さん。
携帯電話が通じない状況下で、出版社に勤めている奥さんに連絡をとるためにブックオフに駆け付けたというエピソードに、「何でブックオフやねん」と岡崎さんからツッコミが入ります。
「ブックオフは自分でも名案だと思ったんですよ」
という答えが場内の笑いを誘い、2時間のトークは幕を閉じました。
※何故ブックオフだったのかはお考えください。
魚雷さんの飄々とした魅力と温かさのある人柄を存分に堪能できた2時間だったのではないでしょうか。

(スタッフ:塚田)


「Book!Book!Sendai 2011」レポート

Book!Book!Sendai2011

全国各地で行われているブックイベント。

“6月の仙台は本の月”と称して、宮城県仙台市では「Book!Book!Sendai」が開催されました(5月24日~7月4日)。

震災後に危ぶまれた開催でしたが、実行委員の皆さんの熱意と頑張りで、盛り沢山の企画が「東北ブックコンテナ」を皮切りに次々と催されました。

その「ブックコンテナ」(5月26日~6月13日実施)の開催場所は、西荻ブックマークが義捐金を送った「book cafe 火星の庭」。

今回は「火星の庭」と、後半最大のイベント、「Sendai Book Market」(一箱古本市など)を訪ねました。

一箱古本市への出店はしていません。仙台を、実行委員の皆さんを応援したいという気持ちで、お客として行きました。

日帰りの参加でしたが、それでも充分楽しめました。

東京から出店した方々、そしてそれを見に行った方々(私たちと同じ気持ちで行かれたと思います)と会場でお会いしました。

写真でその様子をお届けしたいと思います。

※サムネイル画像をクリックすると大きな画像が別窓で表示されます。

スタッフ・加藤


ご来場ありがとうございました!(第53回西荻ブックマーク「西荻こけし祭り」)

「西荻茶散歩」2日目の6月5日(日)に開催いたしました

第53回西荻ブックマーク「西荻こけし祭り」、

本当にたくさんの方にご来場いただきました!

どうもありがとうございました!!

出演者・出店者のみなさん、ご協力いただいたこけし屋 さん・にわとり文庫さんに、

心より感謝いたします。

出店料および当日寄せられた募金を合計した

20,214円

KOKESHIEN! のご紹介により、東京こけし友の会 に寄付いたしました。

この寄付金は、同会を通じ、こけしの産地・東北への災害救援義援金として活用されます。

今回のイベントレポートは当日の会場写真をメインに構成しました。

この日のこけし屋の熱気をきっかけに、ホットなこけし愛の輪が、もっともっと広がりますように……!

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ご来場ありがとうございました!(第52回西荻ブックマーク「きのこと文学、詩、短歌とその周辺」)

第52回西荻ブックマーク

5月17日、日曜日。絵に描いたような五月晴れの青天のもと、第52回西荻ブックマーク「きのこと文学、詩、短歌とその周辺」が開催されました。

出演は『きのこ文学大全』(平凡社新書)の著者、飯沢耕太郎さん、きのこ偏愛歌人、石川美南さん、きのこ小説の作者、高原英理さんの3名です(出演者アイウエオ順)。

まさに、当代のきのこ文学界を代表する3名が一同に会した、きのこ文学にとって記念すべき一大イベントのはじまりでした。

飯沢耕太郎さんはきのこ柄の開襟シャツといういでたち。気合いのほどがうかがえます。

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