ご来場ありがとうございました!(第81回西荻ブックマーク 『古本屋になろう!』 アフターアワーズ ~「古ツア」さんと共に語る~)

第81回西荻ブックマーク
吉祥寺の古本屋「よみた屋」さんが『古本屋になろう』という本をつい先日刊行され、その出版記念のトークとして、よみた屋さんと更にはゲストとして古本屋ツアー・イン。ジャパンこと小山力也さんをお迎えしてブックマークでお話しをして頂いた。
この書名からまずは説明をして頂く。古本屋になりたい人がどうやったら経営できるかという本である。古本屋の入門書としては志多三郎『街の古本屋入門』や『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』(北尾トロ)などがあるが、精神的なものが多い。古本屋はこんなにしんどい商売であるなど古本屋の日常に関して主観的に書かれたものが多い。
一方、よみた屋さんの本は古本屋の仕事を物理学的、経営学的観点から捉えた入門書である。他の店主さんたちはこの本に書いてあるようなことまでやってないと言われることが多いという。だが、本当は皆、やっているのだ。全部をやっている人は少ないにしてもある程度まではやっている、それも無意識に。その無意識にやっている作業を言語化して書籍にしたのが今回の『古本屋になろう』なのだ。どれかは自然にできる。その自然にできない部分を参考にしてもらえればとおっしゃるよみた屋さんにはこの本の中級編というか続編をぜひお願いしたい。

「見たら買え」と昔は言われていたそうだ。ネット通販なんかもない時代は、見逃すとまたその本に出会う確率は少ない。
だが、ネット社会の今はそういうこともなくなってきている。店の本は全品、ネットの価格を調べているというよみた屋さん。
仕入れの速度と売れる速度が同じではないといけないとも言われていた。10年で一度しか手に入らない本はせめて半年は置いておきたいと。そういう本を3日で売れる値段にしてしまうと、「あの本があの店にあったな」と広まらないといわれるのだ。この話は面白いなと興味深く聞いていた。値段にはそういう適正価格があるものだと。
他にも古本にまつわる古本屋の面白い話は続く。古本屋のとある店主さんは本をクリーニングしすぎて腱鞘炎になり、とうとう店を閉めたらしい。とにかく店頭に出す100円均一のような本でもきっちりきれいにしないと気が済まなかったらしく、その冊数たるや膨大なものであっただろう。
そうやって一般人の本が商品となっていく。よみた屋さんの8割はちゃんとやり残りの2割はほどほどにというお話もよかった。というのは残りの2割はちゃんとやるとコストが8割のもの以上にかかり、効率が悪いからなのだ。そういう力配分が必要で見極めていくことも大事なのだ。
まだまだ含蓄あるお話は続く。常に学び続けよと。古本屋が好奇心、探求心をなくしたら終わりであろう。
世の中には一生かかっても読み切れないほどの本がある。読んでない本をいかに説明できるか。大体の筋と例外を知ることが大事だと。その例外が古本屋の相場であるとも。その店の不得意分野を狙うといいと、古本好きが喜びそうな発言もでた。知ってる人も多いだろうが、そういうとこに隙ができる。それがまたお客としては嬉しいのである。帳場の後ろのガラスケースに入れてある商品などは売る気がなく、こういう商品がうちにはあるよと見せるための看板商品なのだと。
司会の広瀬さん(音羽館)も絡んでの値段話がこれまた面白かった。売場の値段がついてない本を「いくらですか」と聞かれ、広瀬さんが「調べたのに安く言って失敗することがある」と言われ、古ツアさんは「調べずに200円とか言ってくれる方が心意気」といい、うんうんとうなづいていた人も多いだろう。
よみた屋さんは値段のついてない未整理の本にはさわってほしくないと本音をもらし、じっくり検分してから売場にだしたいとも言われていた。
値段をつけるのが古本屋の主張なのだ。値段には魂がこもっている。ネットよりお店に来てくださるお客さんの方がありがたいとも言われていたが、本の話はしたいが、売るのはいやというか、接客は好きではなく、個人的には黙って古本を売りたいというのが面白かった。
棚に種をまき、その雑草をぬくのが私の仕事だとも言われていた。棚がずっと同じ本だけでは常連さんが飽きてしまう。常に新陳代謝が求められる。
よみた屋さんはバリューブックスさんの戦略は賢いと言われていた。バリューブックスに本を寄付したら、その売上をバリューブックスがとある団体に寄付する。そうするとその団体が宣伝してくれる。
話はよどみなく続き、つい最近改装したよみた屋さんのことにも話が及ぶ。気分を変えたくて改装したらしいが、それによって、前はお客さんがどんな本を買っていたか見ることができていたのに、今は配置の関係上、それができないのがいたいと残念そうに語るよみた屋さん。
古本屋の裏話が最後までよどみなく繰り広げられたトークとなりました。

古書ますく堂 増田)


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