第47回西荻ブックマーク

2010年11月13日(土)
七〇年代は やっぱり劇画の時代だった。
平田弘史から大友克洋まで
~いま振りかえる「増刊ヤンコミ」の光芒

出演:
橋本一郎/元少年画報社編集者。「サンコミックス」創刊編集長
戸田利吉郎/現少年画報社社長
赤田祐一/編集者。「クイックジャパン」創刊編集長。「QJマンガ選書」などを担当
会場:今野スタジオマーレ
開場14:30/開演15:00
※第47回は土曜マチネーでの開催となります。
開場/開演時間にご注意ください。
料金:1500円
定員:30名
要予約
七〇年代青年漫画の牙城として漫画史に残る「増刊ヤングコミック」(少年画報社)。
石井隆や宮谷一彦、大友克洋等の作家が登場したハイブローな劇画誌の元編集者お二人に、当時の沸騰する劇画の世界を聞く。

ご来場ありがとうございました!(第46回西荻ブックマーク「〈佐藤泰志の文学〉ふたたび」)

“来場者がおのおのの言葉で佐藤泰志を惜しみ、彼の作品の魅力を語りあう”場となった第27回西荻ブックマーク「そこのみにて光り輝く~佐藤泰志の小説世界~」(2008年11月)。約2年前のことです。

そして没後20年の命日にあたる10月10日、「『海炭市叙景』公開記念 〈佐藤泰志の文学〉ふたたび」と題して、スタジオマーレに4人の方々に登場して頂きました。

福間健二さん

前半は、詩人で映画監督、首都大学東京教授の福間健二さんです。第27回でもお世話になった方です。佐藤泰志の友人でもあった福間さんからは、佐藤文学とはどういうものかをお話し頂きました。

佐藤泰志は村上春樹と同じ1949年生まれ。佐藤泰志の時代は村上春樹の時代でもあったのですが、福間さんは佐藤泰志の気質・個性はどう出来上がっていったのかと語り始めました。貧しさと豊かさの境目の時代に育ち、学校に残って帰りたがらない子どもだった。図書館や文芸部に入り浸るような……俳句・短歌・散文などの投稿が盛んだった環境で活躍した、早熟な作家の学生時代が浮かび上がってきます。

その頃には小説家になる以外の人生の選択肢が無くなっていた。そして中上健次、村上春樹らに比べて学生作家としてリアリティがあったと思うと、福間さん。同人誌に掲載して後に大手文芸誌に掲載してしまった「もうひとつの朝」の事情。北海道では期待されていた作家の、長い苦労と闘病。“同人誌に書いている作家を出版界が食べていける作家に育てていない”と静かな憤りを込めて文芸誌の役割を問いました。

今回文庫として復刊された『海炭市叙景』(当日、西荻ブックマーク&音羽館から来場者の方にプレゼント)は、同人誌での発表から文芸誌『すばる』へと掲載が移り、途中で打ち切られた作品集です。作家は残りをまとめて書こうとしていた、もしこのまま続けられていたら1990年の自殺は無かったかもしれない。本当は帰りたくなかった故郷・函館へ戻って、作中で函館を作りなおして、今の世の中で生きている事の大変さを書いてやろうとしたんだと思う、という最後の作品についてのお話は、皆さんの心に深く残ったのではないかと思います。

佐藤泰志とはある意味で文学的な作家だった、出てくる登場人物がみな佐藤泰志である、と締めくくられました。福間さんによれば、本になってない作品がもっと沢山あり、もっと面白い作品もあるということです。

福間さんの話を静かに熱心に聞く会場の雰囲気から、お客さん(中には佐藤泰志を知る方も)のこの作家と映画化への思いが伝わってきました。質問コーナーでは、話すのはまずいんだけど、と言いながら答える場面もありました。

越川プロデューサー、熊切和嘉監督、岡崎武志さん

ここで休憩を挟んで後半へ。

スローラーナー代表で映画プロデューサーの越川道夫さん、映画『海炭市叙景』監督の熊切和嘉さんをお迎えし、司会進行役を書評家・ライターの岡崎武志さんに務めて頂いて、スクリーンで映像も見せながらのトークとなりました。

全体からよいシーンだけを抜いてまとめた映像を見ながら、お二人の映画化に至るきっかけを岡崎さんが質問しました。企画が立ち上がってから映画公開まで2年弱。北海道出身の熊切さんは、2年前の函館映画祭の時に原作を読んだそうです。越川さんは、クレインから出版されている『佐藤泰志作品集』を読んだ時、映像でいけるかなと思ったそうです。

函館の方々が資金集めをしてくれて、企業でも自治体でもなく、市民主導の町ぐるみの規模の大きさという点では初めてじゃないか、と越川さん。

ファンタジックでないリアルな函館を撮っているけれど、海炭市という設定はネックにならなかったか?との質問に、架空の海炭市でも実在の函館市でもなく、中小の都市のあり方の二重写しで撮ると考えていたから問題なかったと越川さんが答えました。80年代の話だけれど、今の話としての内容が必要だと考えた越川さんと熊切さんは、撮影中、数々の僥倖に恵まれ、火事やクレーンのシーンなどよい画(え)が脚本前から撮れたそうです。

現地で急きょ借りた軽トラの会社名を使ったこと、撮影に使う家は実際に人が住む建物を探したこと、電車のシーンの撮影の工夫、猫を飼うおばあちゃんやスナックのママさんは現地でスカウト、つまり役者ではなかったこと(これは驚きです)等々、試写をすでに見た人は一つ一つに驚き、これから見ようとしている人はとても期待がふくらむ、楽しいエピソードが続きます。

出演者についてのエピソードを聞かせて欲しいと言われて、これに対しても映画を一層楽しめるお話がお二人から聞けました。谷村美月さんのちょっとした仕草がすごくよかったこと、原作のイメージと違ったけれど演じてもらっていい感じだと思ったという竹原ピストルさん、それから難しい役を最も信頼している加瀬亮さんにお願いして、現地の役者やエキストラの中で混じって撮影をしてもらったこと、小林薫さんや南果歩さんのベテラン陣にお願いした演技について……話はつきない中、時間も残り少なくなり、お二人から映画への最後のコメントをお聞きしました。地元で暮らしている風景を撮りたかったと、越川さん。親の仕事に対して自分の映画の仕事が後ろめたさがあり、それに対してこの映画を撮ったと、熊切監督。質疑応答もジム・オルークの音楽や役者さんについての質問などが参加者から出てまた盛り上がり、今後の公開への期待を皆さんで確認して終了しました。

11月27日から函館で完成試写会と先行上映が始まり、東京国際映画祭のコンペティションに選ばれています(日本からは2作品)。また、10月6日に発売された小学館文庫『海炭市叙景』も北海道を中心に売れ行きが好調です。映画も作品も、ぜひご覧になって下さい。


スタッフ:加藤

※11/3、佐藤泰志の文学の舞台の一つであり、函館出身の彼が長年住んでいた街・国分寺でも、映画『海炭市叙景』公開記念イベントが開催されます。
「佐藤泰志ゆかりの国分寺で、海炭市叙景の世界に出会う」
11月3日(水・文化の日)14:00~16:00
会場 : 国分寺市エルホール
» 詳細はこちらから



第46回西荻ブックマーク

2010年10月10日(日)
『海炭市叙景』公開記念
〈佐藤泰志の文学〉ふたたび

出演:
熊切和嘉(映画監督、『ノン子36歳 (家事手伝い)』’08)[予定]
越川道夫(スローラーナー代表:プロデューサー)
福間健二(詩人・映画監督、首都大学東京教授)  ほか

※前チラシ・『西荻丼』24号記載の日程が変更となりました。

会場:今野スタジオマーレ
開場:16:30/開演:17:00
料金:1500円
定員:30名
要予約
佐藤泰志の幻の傑作がついに映画化! この冬全国公開されます。西荻ブックマークでは’08年にこの早世の作家をとりあげたイベントを開催し好評を博しました。このたび『海炭市叙景』映画化記念として、没後20年の命日にあたる10月10日、詩人であり長年の友人でもあった福間健二さんをお招きし、ふたたび佐藤文学の真実に迫ります。また映画の製作スタッフにも出演していただき、可能な限り映画の魅力も探ってゆきます。

≪緊急告知!≫
映画原作本、佐藤泰志『海炭市叙景』(小学館文庫)定価650円を参加者全員にプレゼントいたします!

≪追加告知!≫
岡崎武志さんの出演が決まりました!
岡崎さんには越川プロデューサー、熊切監督と三人でディスカッションをしていただきます。
映画の予告編やメイキングの映像をご覧いただくことになりました。ご期待ください。


第45回西荻ブックマーク

2010年9月26日(日)

古本・トロイカ・セッション
~『彷書月刊』休刊から『昔日の客』復刊まで~

出演:
田村治芳(七痴庵):彷書月刊編集長(予定)
内堀弘:石神井書林店主
岡崎武志:書評家、ライター

※『西荻丼』25号記載のタイトル・内容が変更となりました。

会場:今野スタジオマーレ
開場:16:30/開演:17:00
料金:1500円
定員:30名
要予約
惜しくも休刊を迎える『彷書月刊』、奇跡的な復刊を果たす『昔日の客』。そして「興居島屋」からリニューアルした「なずな屋」などなど、この秋の古本をめぐる話題について、業界の達人3人をお迎えし縦横に語っていただきます。ツイッターやブログで書かれることのない、「古本と古本屋」のとっておきの話をお聴きします。

ご来場ありがとうございました!(第41回西荻ブックマーク「公開編集会議!『リテラエ・ウニヴェルサレス』は謎だらけ?」)

第41回西荻ブックマーク

撮影:川本要

第41回西荻ブックマークでは、インターネットのサイトである『リテラエ・ウニヴェルサレス』、その運営を行う「ユニット・アンパサンド」の4人(武村知子さん、山本貴光さん、白井敬尚さん、郡淳一郎さん)をゲストにお迎えしました。

「本をめぐるマンスリー・イベント」である「西荻ブックマーク」で、なぜ、インターネットのサイトを取り上げたのか?
わたしたちにとって、もはや日常となっている、インターネットをブラウザで見る/読む、あるいは書くという行為。その媒体であるサイトの機能そのものを、本をめぐる現代的な課題から問い直している、きわめて尖鋭的で実験的なサイトとして『リテラエ・ウニヴェルサレス』があり、しかも、その運営メンバーはいずれも、本の世界ではその名を知られる、恐るべき手練れの4人!
「アクセス即強制フル・スクリーン化! 1パネル=10万ピクセル四方! 行頭・行末禁則すべてoff! 元ネタはBARBEE BOYSって……いったい、この人たちは何がやりたいのか?」(告知文より)
現状のサイトから読み取れる情報だけではどうにも辿り着けそうにない、彼等、「ユニット・アンパサンド」の壮大かつ複雑な企てと試みを、直接、解説していただく場を、ぜひとも設けたい!というのが、今回の企図でした。

当日のトークは2部構成。質疑応答を最後に行わない代わりに、客席からのコメントを常時受け付ける、というライブ感溢れる設定で行われました。
前半では、『リテラエ・ウニヴェルサレス』のなりたちやサイト名・ユニット名の由来について、武村さんがお話をされた後、スクリーンに現在の『リテラエ・ウニヴェルサレス』を投影しながら、そのデザインの技術的な問題点が話されました。書体の選択や組版、本作りの現場では常識とされてきたことが、インターネットのサイトにおいては、どう扱われるのか? プログラマとして設計・管理を担当する山本さんが直面した困難、デザイナーとしてアート・ディレクションを担当する白井さんが感じた危機。客席からも早くも活発な質疑が飛び出しました。
後半では、先に客席からのコメントを積極的に募り、それへの回答として、山本さんより、『リテラエ・ウニヴェルサレス』上で導入が予告はされながらも、いまだに実装のされていない「拡大縮小機能」のデモを交え、「新たなる百学連環」図の構想に関するプレゼンテーションが行われました。
開演17時、終演20時。あっという間の3時間。客席のほぼ半数が参加された打ち上げの場でも、まだ話し足りない、いつまでも話は尽きない、そんな雰囲気が最後まで続いていました。
出演者と客席のそれぞれが、対話を通じて、学術研究・デザイン・編集・本とインターネットの今後などなど、各自の課題とそれに役立つ何らかのヒントを持ち帰ってくださった、そんな貴重な一夜になったような気がしますが、いかがでしたでしょうか……?
『リテラエ・ウニヴェルサレス』の今後の展開はもちろん、「ユニット・アンパサンド」の4人それぞれの活動も要チェックです!

最後になりましたが、武村さん・山本さん・白井さん・郡さんのゲストのみなさま、ご来場くださったみなさま、nbmスタッフのみなさま、本当にどうもありがとうございました。

今後の西荻ブックマークもどうぞよろしくお願いいたします。

企画・司会:木村カナ