ご来場ありがとうございました!(第79回西荻ブックマーク「リアリティとは生きた証」 ~『井田真木子著作撰集』刊行記念トークショー)

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午後4時半開場、5時開演。開演の時点で、会場はほぼ満席です。客席はリアルタイムでの井田真木子読者の世代と、後追いの若い世代が半々といったところ。
生前の井田さんと面識はないという、北沢さん、北條さん、清田さん。
実は三人ともに、作家・井田真木子との出会いは遺作『かくしてバンドは鳴りやまず』だったとか。そこから著書を遡って読んでいく過程で気づいた初期~晩年にいたる文体の変化と、試行錯誤の末にたどりついた『かくしてバンドは~』のスタイルについて…と話題は進みます(「この作品で新しい文体を獲得した井田さんは、次へ進もうとした矢先にいなくなってしまった」北沢さん)。
北條さんは、井田さんが詩を書くことから出発した点に着目、若き日の井田さんが寄稿した詩誌「無限」を持参してくださいました。著作撰集にも一部収録された詩集『雙神の日課』とともに、井田真木子の知られざる原点が垣間見える貴重な資料です。
一方北沢さんは、井田さんが大学卒業後、早川書房に勤務していた経歴に触れます。井田さん在籍時(70年代後半)の同社は、海外ノンフィクションを盛んに翻訳刊行していた時期でした。このことが、井田さんの仕事に影響を与えているのではないか? なるほど、『かくしてバンドは~』では、会社員時代に出会った『さもなくば喪服を』(L・コリンズ&D・ラピエール)の鮮烈な記憶が語られていました。
また井田さんの文章には、並び立つ二者を登場させ、そのうちの一方へ思い入れていく特徴的なスタイルがある、とも(K・バーンスタインとB・ウッドワード、長与千種とライオネル飛鳥など)。いずれも、著書を読みこんだ人ならではのハッとさせられる着眼点です。
そして、『井田真木子著作撰集』の編集・発行人である清田さんは、井田さんのご両親とのやりとり(お父様は見本ができる数日前に亡くなられたそうです)や、担当編集だった方たちの反応(「どなたも井田さんの思い出を次々語ってくれました」…)等、本が出来上がるまでについて、版元ならではのエピソードを交えて語ってくださいました。
印象的だったのは、井田さんが知人たちへ、互いに内容が食い違う話を語っていたという事実です。たとえば、「自分が聞いた話では、井田さんの本名は真木子ではなく槇子だとか」と北條さん。それを聞いた清田さんが井田さんのお母さんに確認したところ、そうした事実はなく、本名は「真木子」で間違いなかったそうです。
井田さん本人が発信源と思しい真偽不明の噂がいくつも残されていること。ここからわかるのは、井田さんが本来的に「物語る人」だったことだ(「たとえば寺山修司のように」)、と北沢さん。議論は「綿密な取材に基づき、主観を排し、事実のみに立脚して、ある事件や現象を描く」とされる従来のノンフィクションと、井田真木子の手法の違いへと続いていきました。
もう一点、北沢さんの発言で興味深かったのは、出世作『プロレス少女伝説』についての指摘です。曰く、『プロレス少女伝説』は「サブカルチャーを題材にしたはじめての大宅壮一賞受賞作だった」。しかし、それ以降、同路線の受賞作が出なかったことが、その後の日本のノンフィクションを狭いものにしてしまったのではないか? 北沢さん自身の仕事への姿勢に支えられた説得力ある言葉でした。
途中休憩をはさみつつ、2時間超のトークはここで終了。さまざまな方向に話題が広がる(そこからさらに議論が発展しそうな)中身の濃い時間となりました。
清田さん曰く、「本の売れ行き次第では、著作集の続刊も作りたい」とのこと。井田さんが残した作品の数々は、読み継がれるべきリアリティを今も失っていません。この日来てくださった方々にも、その魅力はしっかり伝わったのではないでしょうか。
今回の本には入らなかった『小蓮の恋人』や『十四歳』が読める続刊が、ぜひ実現してほしい。そのためにも、『井田真木子著作撰集』がいっそう多くの読者を得るよう、心から祈ります。

(宮里)

追記/今回は特別に、北沢さん、北條さん、清田さんからコメントをいただきました。

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第79回西荻ブックマーク

井田真木子 著作撰集「リアリティとは生きた証」
~『井田真木子著作撰集』刊行記念トークショー
出演/北沢夏音・北條一浩・清田麻衣子

日時:2014年8月31日(日)
17:00~19:00(開場16:30)
会場:今野スタジオマーレ
定員:30名
料金:1500円
2001年に44歳で亡くなったノンフィクション作家・井田真木子。神取忍や長与千種ら女子プロレスラーたちの姿を追った大宅壮一賞受賞作『プロレス少女伝説』や、特異なノンフィクション論である絶筆『かくしてバンドは鳴りやまず』など、決して長くはない活動期間中に濃密な仕事を残して去ったこの作家を、もう一度読み返す。
いま彼女が生きていたら、どんな本を書いただろう? 彼女の仕事の「リアリティ」とは? 一人出版社である里山社・清田さんは、井田さんのどこに惹かれて撰集を刊行するにいたったのか?
井田さんの仕事に強い関心を持ち続けているライターの北沢夏音さんと北條一浩さん、そして清田さんに、いまも古びない井田真木子の魅力を語っていただきます。

出演者プロフィール:

北沢夏音
1962年生まれ。ライター、編集者。大学卒業後、少年マンガ誌、ジャーナル誌等の編集に携わる。92年、街と音楽をつなぐインディペンデント・マガジン『Bar­f­Out!』を創刊。同誌を離れ、マガジン・ライターとして独立後は、数多くの雑誌にサブ・カルチュアにまつわる文章を寄稿。現在も多岐にわたる活動を続けている。著書に『Get back, SUB! あるリトル・マガジンの魂』(本の雑誌社)がある。

北條一浩
1962年生まれ。ライター、編集者。「サンデー毎日」等でインタビューや書評を執筆。著書に『わたしのブックストア 新しい「小さな本屋」のかたち』(アスペクト)、編著に『冬の本』(夏葉社)、取材構成に『西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事』(広瀬洋一著、本の雑誌社)などがある。

清田麻衣子
「里山社」代表。大学卒業後、出版社勤務を経て独立。2013年に一人出版社・里山社を設立する。今回の『井田真木子著作撰集』が、『はまゆりの頃に 三陸、福島2011~2013年』(田代一倫)につづく2冊目の刊行物となる。Webマガジン「マガジン航」にて、里山社をおこす過程を書く「本を出すまで」を連載中。
http://satoyamasha.com/


ご来場ありがとうございました!(第77回西荻ブックマーク「『笑う、消しゴムはんこ。』出張ワークショップ」)

第77回西荻ブックマーク

第77回西荻ブックマーク4月20日日曜日、この日は西荻ブックマーク企画イベントで
乙幡啓子さんによる消しゴムはんこ作りワークショップが開催されました。
gallery cadoccoの原田、この日は飛び入り参加することに。
ブックマークのフライヤーなどに地味に登場していたシンボルマークを
はんこにしたら、イロイロなモノに押してオリジナルグッズが作れるのでは?
という、スタッフ皆の膨らむ夢を背負って、イザ参加!

小学生も参加した第1回に続き、私の参加した第2回は合計4人と少人数制でした。
乙幡さんのファンで遠くからいらしていた参加者もいて、
今まで乙幡さんが作ったはんこの図案やその背景について聞いたりしつつ、
マニアックすぎてニヤニヤが止まらない様子。

初心者用のワークショップということで、乙幡さんセレクトの比較的容易な図案一覧の中から
各自まず1つ選び、説明を受けながら手順を踏んでいきます。
下絵を描いて、はんこ面に転写して、外枠を彫って、、、
と、さもスムーズそうに聞こえるカッターの使い方も、
実際に手を動かしてみると結構難しいものでした。

彫っているうちにウッカリ欠けてしまった、なんて時は、急遽図案を変更!
周りの余分な部分を落として、まずは試しにヒト押し。
おおお!

先生の上手な仕上がりにはちょっと届きませんが、自分で手がけたという充実感もあり、
愛おしく思えてくるものです。押してから見えてくる線のゆがみや余分な部分などは
後からまた整えたら完成です。

その後も、出身県を彫ってみたり、手帳に押す用のチビはんこを彫ってみたり、と
皆様自由に作業を続けました。

そしてもう1つのおたのしみは、乙幡はんこ押し放題!企画。
今回は無地のエコバッグを用意いただいてましたので、それに各自自由に選んだはんことカラーのスタンプを組み合わせてオリジナルエコバッグを作りました。

ギ○ビス社のお菓子でおなじみの、「モ○ドセレクション金賞」という、
絶対他には無いはんこを発見し、是非これを活かして、、、と頭を巡らせ、
私は和風のエコバッグを作りました。

大好きな鳥獣戯画と富士山、そこから昇るのは、そう、金賞!
(モ○ドセレクションって、そこら中のお菓子に付いてない?
日本のメーカーさんがご贔屓なのかな?というちょっとイジワルな想いを込めて)

何とか仕上げたブックマークのロゴマーク、今後ひそかに登場する機会も
あるかもしれません。「Nishiogi Book Mark」の文字を彫るのにはもう少し
修行が必要そうです、自信がついたら次は文字込みのマークを手がけてみたいと思います。

乙幡さんのさりげないサポートを受けつつ、充実のワークショップとなりました。
ご指導ありがとうございました!

そしてgallery cadoccoにて開催中の「妄想工作がやってくる 妄!妄!妄!」は4/23(水)まで。
(12-19時、最終日のみ18時まで)
http://cadocco.jimdo.com/

お子様も一緒に楽しめる展示です、是非この機会に奇想天外な妄想工作の世界にお立ち寄りください!

西荻に妄想工作がやって来る 妄! 妄! 妄!

(gallery cadocco・原田)


西荻に妄想工作がやって来る 妄! 妄! 妄!

西荻に妄想工作がやって来る 妄! 妄! 妄!西荻に妄想工作がやって来る
妄! 妄! 妄!
妄想工作家・乙幡啓子の展示とお店とワークショップ

展示期間:2014年4月18日(金)~23日(水)
初日は13時より19時まで。
最終日は12時より18時まで。
他の日は12時より19時までです。
場所:
gallery cadocco/ギャラリーカドッコ
http://cadocco.jimdo.com/
東京都杉並区西荻北3-8-9
JR中央線/総武線 西荻窪駅下車 北口徒歩5分
tel/fax 03-6913-7626

【終了しました】
第77回西荻ブックマーク
「『笑う、消しゴムはんこ。』出張ワークショップ」

日にち:2014年4月20日(日)
時間:
第1回 14時~15時半
第2回 17時~18時半
参加費:2,500円(消しゴム板・エコバッグ付)
定員:各回15名
場所:今野スタジオマーレ
※小学校3年生以上対象
※道具はすべてお貸しします
※メガネ必要な方はご持参下さい
※乙幡作のハンコも押し放題です

乙幡啓子(おつはた・けいこ)
Webや雑誌で工作記事を連載中。
主宰の「妄想工作所」では「ほっケース」などを世に送り出す。
『乙幡脳大博覧会』『笑う、消しゴムはんこ。』発売中。
妄想工作所 http://mousou-kousaku.com/

「『笑う、消しゴムはんこ。』出張ワークショップ」


第76回西荻ブックマーク

女子と作文・主婦と労働

日時/2014年1月26日(日)
16:30開場/17:00開演
会場/今野スタジオマーレ
料金/1500円
定員/30名
出演/近代ナリコ・村上潔

新年一回目のブックマークは、「女子と作文・主婦と労働」と題して、文筆家、編集者の近代ナリコさんと立命館大学講師・村上潔さんにご出演いただきます。お二人がそれぞれ追い続ける「女子」と「主婦」をテーマに語り合う刺激的な2時間の対話。
ぜひおいでください!

【出演者より/近代ナリコ】

近代以降の社会においては、〈女〉という枠内に割り振られた存在は、社会に捕
捉されてしまった時点ですでに〈主婦〉なのです。「自立した女性」というモデル自
体が虚構だ、と言ってしまってよいかもしれません。
〈主婦性〉とは、一部の主婦業をする女性たちのみがもつ特性ではありません。
〈主婦的状況〉とは、〈女〉総体に課せられる抑圧と、〈女〉をとりまく諸力によっ
て構成される全体状況を指します。
村上潔「著書を語る 『主婦と労働のもつれ』」 (『書標――ほんのしるべ』405
号、2012・8)

村上潔さんは著書『主婦と労働のもつれ その争点と運動』(洛北出版、2012)
で、これまでさまざまに論じられてきた「主婦」のありようとその「働き」につい
て、主婦である当事者たちが、自分たちを規定するものに向き合い、あるいは乗り越
えるために、どのように考え、言葉をつむぎ、行動してきたかの歴史を描きだしてい
ます。
私がこれまで、「女性の生活と表現」 をテーマに、手芸・料理・読書といった女
の活動ジャンルやそれにまつわる本をとりあげてきたのは、当の女性たちが、それを
どう受容し、させられ、しなくてはならなかったか、ということへの興味からでした。
今年(2013年)夏に出した拙著『女子と作文 Girls Write Alone』でも同様です。
それはいいかえれば、私たちが「主婦的状況」をどう生きてきたかに目を凝らす、ということ
だったと思います。本イベントでは、女性の生活と表現の問題を入り口として、主婦
の問題についてお話をうかがい、あわせて、この問題について考える糸口となる本を
村上さんに紹介していただきます。(近代ナリコ)

■村上 潔(むらかみ・きよし)
1976年、横浜市生まれ。2002年から2005年まで、『remix』誌に映画・音楽に関する
記事を寄稿。その後、『音の力〈ストリート〉占拠編』(インパクト出版会)、
『VOL』誌(以文社)などに寄稿。2009年、立命館大学大学院先端総合学術研究科一
貫制博士課程修了。現在、立命館大学産業社会学部非常勤講師。専門は、現代女性思
想=運動史。著書に『主婦と労働のもつれ――その争点と運動』(洛北出版、2012
年)など。論文に「「三十娘」の利害と「家」の瓦解――資源と威厳の確保をめぐっ
て」(『現代思想』41-12、2013年)など。

■近代ナリコ(こだい・なりこ)
1970年生まれ。ミニコミ誌『modern juice』では、女子の生活と表現をテーマに、手
芸、インテリア、お稽古事、料理書などを特集。編著書に、『本と女の子 おもいで
の1960-1970年代』(河出書房新社)、『ナリコの読書クラブ』(彷徨舎)、『鴨居
洋子の世界』(河出書房新社)、『京おんな モダン・ストーリーズ』(PHP研究
所)、『女子と作文』(本の雑誌社)ほか。