第6回「ちいさな古本博覧会」
30日(土) 10時―18時
31日(日) 10時―17時
西部古書会館
杉並区高円寺北2-19-9
昭和[懐新]カルチャー
懐かしいのに、新しい。
レトロ&モダンな本を特集即売。
- ちいさな古本博覧会
http://expo.collabonet-project.com/ - 期間限定!
第6回「ちいさな古本博覧会」web目録
http://collaboexpo.cart.fc2.com/
展示の一部として『昔日の客』コーナーがあり、新旧二冊の『昔日の客』、関口良雄編集の『上林暁文学書目』、尾崎一雄・上林暁・木山捷平・関口良雄・山高登の五人句集『群島』を見ることができるそうです。
夏葉社から復刊されて話題となっている名著、関口良雄『昔日の客』。
10/23(土)公開の映画『森崎書店の日々』に、オリジナルである三茶書房版『昔日の客』がさりげなく登場しているそうです。
古書の街「神保町」が舞台の『森崎書店の日々』は、古本の匂いが全編に満ちている映画。『昔日の客』がどこでどう使われているのか、神保町シアターで確認してみては? なお、現在、神保町・三茶書房のウィンドウに、散歩する関口良雄さんの姿が描かれた山高登さん作「曙楼旧門跡」の版画が飾られてるとのことです。
第3回・第45回に出演された古書肆石神井書林・内堀弘さん、第37回に出演された扉野良人さんが登壇される、神戸でのモダニズム詩シンポジウムのお知らせです。
“来場者がおのおのの言葉で佐藤泰志を惜しみ、彼の作品の魅力を語りあう”場となった第27回西荻ブックマーク「そこのみにて光り輝く~佐藤泰志の小説世界~」(2008年11月)。約2年前のことです。
そして没後20年の命日にあたる10月10日、「『海炭市叙景』公開記念 〈佐藤泰志の文学〉ふたたび」と題して、スタジオマーレに4人の方々に登場して頂きました。
前半は、詩人で映画監督、首都大学東京教授の福間健二さんです。第27回でもお世話になった方です。佐藤泰志の友人でもあった福間さんからは、佐藤文学とはどういうものかをお話し頂きました。
佐藤泰志は村上春樹と同じ1949年生まれ。佐藤泰志の時代は村上春樹の時代でもあったのですが、福間さんは佐藤泰志の気質・個性はどう出来上がっていったのかと語り始めました。貧しさと豊かさの境目の時代に育ち、学校に残って帰りたがらない子どもだった。図書館や文芸部に入り浸るような……俳句・短歌・散文などの投稿が盛んだった環境で活躍した、早熟な作家の学生時代が浮かび上がってきます。
その頃には小説家になる以外の人生の選択肢が無くなっていた。そして中上健次、村上春樹らに比べて学生作家としてリアリティがあったと思うと、福間さん。同人誌に掲載して後に大手文芸誌に掲載してしまった「もうひとつの朝」の事情。北海道では期待されていた作家の、長い苦労と闘病。“同人誌に書いている作家を出版界が食べていける作家に育てていない”と静かな憤りを込めて文芸誌の役割を問いました。
今回文庫として復刊された『海炭市叙景』(当日、西荻ブックマーク&音羽館から来場者の方にプレゼント)は、同人誌での発表から文芸誌『すばる』へと掲載が移り、途中で打ち切られた作品集です。作家は残りをまとめて書こうとしていた、もしこのまま続けられていたら1990年の自殺は無かったかもしれない。本当は帰りたくなかった故郷・函館へ戻って、作中で函館を作りなおして、今の世の中で生きている事の大変さを書いてやろうとしたんだと思う、という最後の作品についてのお話は、皆さんの心に深く残ったのではないかと思います。
佐藤泰志とはある意味で文学的な作家だった、出てくる登場人物がみな佐藤泰志である、と締めくくられました。福間さんによれば、本になってない作品がもっと沢山あり、もっと面白い作品もあるということです。
福間さんの話を静かに熱心に聞く会場の雰囲気から、お客さん(中には佐藤泰志を知る方も)のこの作家と映画化への思いが伝わってきました。質問コーナーでは、話すのはまずいんだけど、と言いながら答える場面もありました。
ここで休憩を挟んで後半へ。
スローラーナー代表で映画プロデューサーの越川道夫さん、映画『海炭市叙景』監督の熊切和嘉さんをお迎えし、司会進行役を書評家・ライターの岡崎武志さんに務めて頂いて、スクリーンで映像も見せながらのトークとなりました。
全体からよいシーンだけを抜いてまとめた映像を見ながら、お二人の映画化に至るきっかけを岡崎さんが質問しました。企画が立ち上がってから映画公開まで2年弱。北海道出身の熊切さんは、2年前の函館映画祭の時に原作を読んだそうです。越川さんは、クレインから出版されている『佐藤泰志作品集』を読んだ時、映像でいけるかなと思ったそうです。
函館の方々が資金集めをしてくれて、企業でも自治体でもなく、市民主導の町ぐるみの規模の大きさという点では初めてじゃないか、と越川さん。
ファンタジックでないリアルな函館を撮っているけれど、海炭市という設定はネックにならなかったか?との質問に、架空の海炭市でも実在の函館市でもなく、中小の都市のあり方の二重写しで撮ると考えていたから問題なかったと越川さんが答えました。80年代の話だけれど、今の話としての内容が必要だと考えた越川さんと熊切さんは、撮影中、数々の僥倖に恵まれ、火事やクレーンのシーンなどよい画(え)が脚本前から撮れたそうです。
現地で急きょ借りた軽トラの会社名を使ったこと、撮影に使う家は実際に人が住む建物を探したこと、電車のシーンの撮影の工夫、猫を飼うおばあちゃんやスナックのママさんは現地でスカウト、つまり役者ではなかったこと(これは驚きです)等々、試写をすでに見た人は一つ一つに驚き、これから見ようとしている人はとても期待がふくらむ、楽しいエピソードが続きます。
出演者についてのエピソードを聞かせて欲しいと言われて、これに対しても映画を一層楽しめるお話がお二人から聞けました。谷村美月さんのちょっとした仕草がすごくよかったこと、原作のイメージと違ったけれど演じてもらっていい感じだと思ったという竹原ピストルさん、それから難しい役を最も信頼している加瀬亮さんにお願いして、現地の役者やエキストラの中で混じって撮影をしてもらったこと、小林薫さんや南果歩さんのベテラン陣にお願いした演技について……話はつきない中、時間も残り少なくなり、お二人から映画への最後のコメントをお聞きしました。地元で暮らしている風景を撮りたかったと、越川さん。親の仕事に対して自分の映画の仕事が後ろめたさがあり、それに対してこの映画を撮ったと、熊切監督。質疑応答もジム・オルークの音楽や役者さんについての質問などが参加者から出てまた盛り上がり、今後の公開への期待を皆さんで確認して終了しました。
11月27日から函館で完成試写会と先行上映が始まり、東京国際映画祭のコンペティションに選ばれています(日本からは2作品)。また、10月6日に発売された小学館文庫『海炭市叙景』も北海道を中心に売れ行きが好調です。映画も作品も、ぜひご覧になって下さい。
スタッフ:加藤