『昔日の客』、映画に登場!

昔日の客 夏葉社から復刊されて話題となっている名著、関口良雄『昔日の客』。

10/23(土)公開の映画『森崎書店の日々』に、オリジナルである三茶書房版『昔日の客』がさりげなく登場しているそうです。

古書の街「神保町」が舞台の『森崎書店の日々』は、古本の匂いが全編に満ちている映画。『昔日の客』がどこでどう使われているのか、神保町シアターで確認してみては? なお、現在、神保町・三茶書房のウィンドウに、散歩する関口良雄さんの姿が描かれた山高登さん作「曙楼旧門跡」の版画が飾られてるとのことです。

映画『森崎書店の日々』公式サイト
http://www.morisaki-syoten.com/


YouTube – 映画『森崎書店の日々』予告編


ご来場ありがとうございました!(第45回西荻ブックマーク「古本・トロイカ・セッション」)

第45回西荻ブックマーク

今野スタジオマーレにて開催された「古本・トロイカ・セッション」。

ゲストは3人で、『彷書月刊』の編集長・田村治芳氏、石神井書林の内堀弘氏、ライターで均一小僧で、古本といえばこの人・岡崎武志氏。田村氏は前日まで無理だろうと予想されていたが、なんとか来ていただいて、本当にありがたい、豪華な顔ぶれとなった。

会場は40人が集まるほどの大盛況。3人のお話は滑らかに、田村氏のお話はゆっくりと、進んでいった。

トークの前に、西荻ブックマークのスタッフが、『彷書月刊』編集部を訪れる一場面がスクリーンに映し出された。
神保町の『彷書月刊』編集部は階段を上がると、そこには返本の山が……、そして中に入っても本の山、山、あるいは資料の山ばかり。所狭しと言わんばかりにうず高く本が積まれていた。
この神保町の編集部は3つめの場所で、そこから、青林堂のビルも更地になったと話題が移り、「更地になったとこを写真にとって、南伸坊に送った」と田村氏が言っていた。
すると岡崎氏が「僕は古本屋の外観の写真をとりだめしている」とコメントし、将来、高値になるぞ、と予言していたのが面白かった。岡崎氏の言うように、古本のガイド本などをみても、お店の外観はあまり写っていない。

次に『彷書月刊』のなりたちへと話は移行していく。
若月隆一氏が田村氏を編集長にした頃のお話。「彷書月刊」というタイトルは、若月氏の提案で、書物の中を彷徨う、書物をたずねるという意味があるということで、それに決定した。
本を売るには自家目録を作るか、『古書通信』にのせてもらうしかない、それで目録を作るときも90円で送れるように半分以下にしたという。

次に『彷書月刊』の歴史を飾った人達の話が出てきた。新劇といえばこの人、松本克平氏。名優だが、本も出していて、ファンに自分で売っていた。初代発行人の堀切氏が本を出したいといっていたという。日本の映画美術監督の木村威夫氏と、同人雑誌を作ったことがある田村氏は、彼に連載を頼んだこともあった。背広とネクタイで古本屋に行き、しかも均一台をあさるという福田豊氏のお話も出てきた。作家・五木寛之氏のエピソードも出た。彼は竹中英太郎氏への義理から特別に書いてくれたのだった。竹中氏は、五木寛之氏原作の映画に油彩の絵を描いていた。井伏鱒二氏にも執筆依頼したが、彼には書けませんと断られた。

300号も続いたのは毎回特集を組めるだけの多彩な執筆陣がいたということが大きい。だからこそ出会いが特集をつくるという、田村氏の言葉が印象的だった。おまけに「1に出久根、2に中山、3、4がなくて、後はずっとない」と会場を笑わせる一言もあった。編集部の外側だけではなく、内側の強力なメンバー・皆川秀氏の存在も忘れてはならない。彼が来てから編集の出来る雑誌になったと田村氏。インタビューの名人でもある皆川氏は後半の120冊を作った。

古本屋と雑誌作りが上手に連環した。雑誌の特集で要る文献が古本屋にあったりと、互いが孤立せずに連携していった。さらには岡崎氏が言うように、『彷書月刊』が、本の面白がり方を提案し続けたからこそ、ここまで続いた。

田村氏は「古本屋は客によって鍛えられる」と。客が皆、軽い本ばかり求めれば、そういう店になる。ただ、最近はそういう客がいないというか、いるんだが、見えにくくなっている、と語る。ネットや電子書籍の普及のせいで、方向性が見えにくくなってきた、とも。古本屋で新しいことを考える奴は皆無だ、と田村氏。たまに考える人がいる、それが北海道のサッポロ堂書店さんだ、と。この人は「環オホーツク」ということを考えた。日本で考えれば北海道は北方だが、北海道・シベリア・ロシアとこの3つで考えれば南方だと。内堀氏は「全く新しいものを作るのは難しいが、今まであったものを違った風に見る」と言い、岡崎氏も「本を買っていくと物の見方がどんどん狭くなっていく」と。古書会館で、年配の客が「何にもいい本がないのう」と言ったとき、田村氏は「こんなにあるじゃないか」と言った場面を語った。

『彷書月刊』は中綴じから平綴じへと変わっていくが、平綴じの頃は『図書』『波』といったPR誌と見た目が同じで、書店で「え、これ、売るの?」と皮肉を言われた、というほろ苦いネタも出てきた。そんな『彷書月刊』がここまで続くと思っていたか、と岡崎氏に聞かれた田村氏は、定期購読者を3ヶ月・半年・1年の3種類で募集した時に、一番多かったのが半年で、まぁ半年位は続くだろうと思った、と答えていた。

岡崎氏が感動したという『彷書月刊』2008年9月号にポラン書房の石田氏が書いた文章を朗読。「本があれば人はきっときてくれる」という一文が印象的だった。さらに「本の力をないがしろにする巨きな力は、人と人、人とモノとのつながりを引き裂く方にも作用しているようです」と深い言葉で締めくくり、休憩。

後半は『昔日の客』の話でスタート。
関口良雄氏は、大森で25年、山王書房という屋号で古本屋をしていた人で、『昔日の客』は1000部刷られた。
そして、今年、夏葉社から『昔日の客』が復刊された。この夏葉社というのは島田潤一郎氏が一人でやっている超零細出版社だ。

『レンブラントの帽子』の次に『昔日の客』をやるとは!と岡崎氏が驚きを隠さずに理由を尋ねる。島田氏は古本屋の人たちに京都の「善行堂」に行けと言われて、行ったそうだ。梅田の紀伊国屋書店でさえ、『レンブラントの帽子』は10冊しか置いてくれないのに、善行堂は30冊も置いて、しかも売り切ってくれた。そこから、山本善行氏のブログに、『昔日の客』を島田氏に頼んでみようか、と知らない間に書かれていた、と会場を笑いに包む。

会場には関口氏の奥様とご子息も見えていた。ご子息は復刊する本のことで島田氏と何度も話し合われた。この本は何ともいえない布の表紙のてざわりがいい。これは布にしてほしいとご子息が希望をだされ、島田氏も普通のハードカバーで出すよりは30万は高くなるが、OKしたのだ。この本について田村氏が毒舌全開。布はすぐに手ずれをするから、新刊書店で売り切らないとね、と島田氏に忠告。古本屋に流れたら、すぐに一万円になるよ、と。会場の人は殆ど買われました(笑) 表紙を開くとすぐにある山高登氏の版画もご子息がリクエストされた。

「森崎書店の日々」という映画の1シーンでこの本がちらっと登場する。それを聞いただけで、この映画を見なければ、と思ってしまう。書店員が『愛についてのデッサン』という本を読む場面で、カウンターにおかれているのがこの本なのだ。

山王書房では売り上げゼロの日はなかったというエピソードも出た。

ラストはじゃんけん大会となる。音羽館さんからのプレゼント本や、今日のゲスト3人のサイン色紙などをかけてのバトルがしばし繰り広げられて終了。

スタッフ:増田

» 出演者のお一人、岡崎武志さんによるレポートはこちら
西荻の夜 – okatakeの日記 http://d.hatena.ne.jp/okatake/20100927

関口良雄『昔日の客』、ついに復刊!

第33回西荻ブックマーク「『昔日の客』を読む ~大森・山王書房ものがたり~」で取り上げた幻の名作『昔日の客』の復刊が決定しました!
10月上旬発売
関口良雄『昔日の客』
発行:夏葉社

2200円+税(予価)/四六判上製/232頁
ISBN978-4-904816-01-1 C0095

野呂邦暢、上林暁、尾崎一雄、尾崎士郎、三島由紀夫、沢木耕太郎といった作家たちが愛した、東京大森の小さな古本屋。それが、『山王書房』です。店主である関口良雄が綴った、作家たちとの交流と、古本と文学に対するあふれんばかりの愛情は、没後、『昔日の客』という書籍にまとめられ、以後、知る人ぞ知る幻の名著として、長い間、古本好きたちに熱心に探され、そして、愛されてきました。実に、32年ぶりの復刊。心があたたまります。

『昔日の客』と関口良雄の名は、野呂邦暢のエッセイ集『夕暮の緑の光』(みすず書房)、沢木耕太郎のエッセイ集『バーボン・ストリート』(新潮文庫)においても、感動的に綴られています。岡崎武志氏をはじめとする、古本巨匠たちの多くも、本書を絶賛し、復刊を祝福しています。


西海孝「父の言葉」

西海孝『空を走る風のように、海を渡る波のように』

第33回で取り上げた、古書店「山王書房」店主にして随筆集『昔日の客』著者、関口良雄(1918-1977)。
そのご子息である関口直人さん作詞の「父の歌」(西海孝『空を走る風のように、海を渡る波のように』収録)に関口良雄の写真を合わせた動画がYouTubeにアップされています。

YouTube – 西海 孝「父の言葉」

ginkgo第33回nbm「『昔日の客』を読む~大森・山王書房ものがたり~」
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ご来場ありがとうございました!(第33回西荻ブックマーク「『昔日の客』を読む~大森・山王書房ものがたり~」)

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山王書房は、東京・大森で1953(昭和28)年に開店し、店主・関口良雄さんの逝去のため1977(昭和52)年に閉店した古書店。尾崎一雄や上林暁、野呂邦暢ら、大森近在の文学者に愛された伝説的なお店です。

関口良雄さんがご自身の還暦の節目として、それまでに書きためた文章をまとめたのが、随筆集『昔日の客』。小部数の出版だったため現在では入手困難な本ですが、その文章の素晴らしさから、知る人ぞ知る「幻の名著」です。

第33回のメイン出演者は、山王書房店主・関口良雄さんのご子息で音楽プロデューサーの関口直人さんと岡崎武志さん。
この本が「文庫化されてだれもが読めるように、みんなで声をあげて応援していきたい」という岡崎さん。関口さんとともに、その魅力を存分に語っていただきました。

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関口直人さんと岡崎武志さん

17時開演。あいにくの雨にもかかわらず、熱心なお客様で会場は満席です。
メイン出演者のおふたりの横には、在りし日の関口良雄さんの写真が飾られています。

本の完成前に関口良雄さんが亡くなったため、直人さんがあとがきを書くことになったいきさつ。
直人さんの結婚式当日、出来上がった本が式の会場に届けられていた感激。
直人さんの誕生日が2月19日で、『昔日の客』もちょうど219ページだった偶然。
式の集合写真を撮影する直前、どこからか銀杏の葉(関口良雄さんの俳号が銀杏子)が1枚、直人さんのもとへ舞い落ちてきた不思議……。
淡々と語られる、まるで小説のようなエピソードの数々に、会場からは感嘆の声があがります。

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朗読する直枝政広さん

休憩をはさんだ後半には、シークレットゲストのミュージシャン・直枝政広さん(カーネーション)が登場。『昔日の客』の一部を朗読してくださいました。
幅広い趣味を持ち、渋い本読みでもある直枝さん。長年探していた『昔日の客』が、以前からお知り合いだった関口さんのお父上の本であることは、数年前、偶然知ったのだとか。

ちなみに、先月、関口良雄さんの33回忌を迎えられたそうですが、なんと西荻ブックマークも今回が第33回! ここにも不思議な偶然が生まれていたのでした。

客席には、石神井書林・内堀弘さんやライター・荻原魚雷さん、天誠書林・和久田さん(中学生のころから山王書房に通っておられたのだそう)の姿も。途中で、それぞれ『昔日の客』の魅力や関口良雄さんの思い出を語ってくださいました。お三方ともに、関口良雄さんの文章と人となりに敬愛の念を抱いていることがよく伝わってきました。

その後は、山王書房についての資料集「風狂の人・山王書房店主関口良雄」を編纂された萩原茂さんもトークに参加。関口さんと岡崎さんのリラックスした語り口のおかげで、会場は終始なごやかな雰囲気に包まれていました。

西海孝『空を走る風のように、海を渡る波のように』
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最後には、関口直人さんが持参されたギターで、関口良雄さんが遺した詩に曲を付けた歌を披露。大きな拍手のなか、イベントは幕を閉じました。

来場されたお客様には、萩原さんのご好意で「風狂の人・山王書房店主関口良雄」がプレゼントされました。手軽に『昔日の客』が読めるようになる日まで、この本で関口さんの業績をしっかり「予習」しておくことができますね。

ほとんどの方が未読だったと思いますが、それでも「昔日の客」の類を見ない面白さは、お客様に十分伝わったのではないでしょうか。
出演者のみなさん、ご協力いただいたみなさん、お越しくださったみなさん、ありがとうございました。

次回からの西荻ブックマークも、どうぞよろしくお願いいたします。

スタッフ:宮里

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