盛林堂書房「山王書房店主関口良雄と昔日の客」(特集目録&ミニ展示)

『盛林堂の本棚』第2号

ブログ「盛林堂のきまぐれ店番日記」より

盛林堂書房さんの自家目録第2号『盛林堂の本棚』(2012年6月)が発行されました。
特集は「山王書房店主関口良雄と昔日の客」です!
盛林堂のショーウィンドーにて、ミニ展示「山王書房店主関口良雄と昔日の客」、6月2日(土)~17(日)開催!

ミニ展示「山王書房店主関口良雄と昔日の客」

ミニ展示「山王書房店主関口良雄と昔日の客」ミニ展示「山王書房店主関口良雄と昔日の客」

※上の画像はクリックすると別ウィンドウで大きなサイズの写真が開きます。

この後にも貴重な展示品が追加されています! 会場の盛林堂書房さんに、どうぞ足をお運びになって、ご覧ください!! 実物の資料が見れるめったにない機会、ということで、写真撮影も歓迎だそうです。「写真に撮って、こうした展示が行われていることを、お知り合いにぜひ広めてください!」……関口直人さんからの伝言です。

ginkgo第33回nbm「『昔日の客』を読む~大森・山王書房ものがたり~」
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盛林堂のきまぐれ店番日記
http://d.hatena.ne.jp/seirindou_syobou/

『関口良雄さんを憶う』復刊記念 西海孝×関口直人 ライブ

日にち 3月23日(水)
時間  19時開場/19時半開演
会場  古書ほうろう
出演  西海孝
     関口直人
入場料 2000円(飲み物持ち込み可)
※ご予約はお電話かメールで、古書ほうろうまで
03-3824-3388
E-mail:horo●yanesen.net
●を@にかえてください。
ご予約の際の件名は「3/23 西海孝・関口直人」で。
(お名前、人数、当日ご連絡できる電話番号をお書き添えください)

『関口良雄さんを憶う』、夏葉社より復刻!

『関口良雄さんを憶う』1978年版

『昔日の客』著者・関口良雄の追悼文集
『関口良雄さんを憶う』が夏葉社より復刻!!

『関口良雄さんを憶う』
発行:夏葉社

ソフトカバー 72ページ 税込840円
ISBN:978-4-904816-02-8

「作家たちが綴る、『昔日の客』の著者の思い出。」

「関口君が死んだ。あれほど度々来てくれたのに、入院中は病院まで来てくれたのにもう一生来てくれることはないのだ。」と、嘆くようにして書く上林暁。「水瓶に花を活けた古本屋が他にもあることを私は知らない。」と清廉な文章で在りし日のことを振り返る野呂邦暢。朝日新聞をはじめ様々なメディアで紹介され、多くの書評家から絶賛された『昔日の客』の著者の思い出を、26人の作家、友人たちが綴ります。編集人は尾崎一雄と山高登。古き良き時代の追悼文集です。

オンライン書店ビーケーワン:関口良雄さんを憶う


「大森・山王書房の旅」レポート

昔日の客12月12日の午後、JR大森駅の改札前に、夏葉社の島田さんの企画「大森・山王書房の旅」に参加する面々が集まりました。夏葉社さんのツイッター告知で知ったという9名が、この秋に復刊した関口良雄著『昔日の客』(現在2刷)へのそれぞれの思いを携えてやって来ました。

関口良雄さんの御子息・直人さんの案内で、一行はバスに乗って池上通りを進み、〈大田文化の森〉で下車。目指すはそのバス停から数分の場所にある、旧・山王書房です。当時の面影はないですが、かつては夜9時位まで明かりがついていたお店がそこにあったのです。一同、最初から、気持ちがかなり高まります。
山王書房の看板
そして招かれて入った玄関で一同が見上げた先には、「山王書房」の看板が。さらに感動です。
1階のお部屋に通して頂いたのですが、そこは“良雄さんと山王書房の部屋”。書棚には文章に登場した作家たちの著作がぎっしりと収まっていました。
玄関でにこやかに迎えて下さった故良雄さんの奥様・洋子さんが加わって、「この先がお店になっていて、親父はこう座って…」と直人さんの話が始まり、山王書房での良雄さんの写真など思い出の写真を次々と見せてもらいました。壁には作家から送られた色紙や、直筆の若山牧水や石川啄木の歌が。半紙に書いたそれらの歌は、表がガラスの箱に入れて後ろからライトを当て、店に飾っていたのだそうです。だいたい一週間に一度は替えて楽しんでいたそうで、それをお店の前を通るバス停や乗り込んだバスの窓から見て楽しんだ人もいたとか。馬込の文士村へ行く人が途中で立ち寄り、店主との会話を楽しんでいたというエピソードなどが、お二人から語られました。そして、最も興奮(感動)したのは、野呂邦暢さんから贈られた著作『海辺の広い庭』を、直人さんが開いて見せてくれた時でした。
そこには青の地に黒く太めの文字で、“昔日の客より感謝をもって”の一文が。
……現在、夏葉社では追悼文集「関口良雄さんを憶う」の復刊作業を進めています。来年のまだ春を迎える前に、私たちは読む事が出来そうです。それを聞いた一同は、期待が膨らんで仕方ありませんでした。

さて、ひとしきりお話を聞いて、お二人の案内で「昔日の客」ゆかりの場所や大森・池上界隈の散策へと出発しました。直人さんの説明を聞きながら、目指すは大田区立の川端龍子記念館。目的は併設の龍子公園(龍子のアトリエとその庭)です。解説付きで龍子が設計・建築した元住居を見学した後に、一同は馬込の住宅街に入り込みます。作家・三島由紀夫邸の前を静かに通り過ぎ、女優・長岡輝子のエピソードを洋子さんから聞きつつ自宅跡を見ながら南馬込方面へ。 “新しい家ばかりになってしまった”と話す洋子さん。起伏のある馬込の坂道を、杖をついてすたすたと歩いていきます。もうじき80歳になられるとは思えないその健脚に一同は驚きながら、桜並木に出て、黒鶴稲荷神社のある高台の等閑森(とうかもり)へ。

直人さんが子どもの頃は、夕方になると大森方面を一望に見渡せる場所としてよく来ていたそうです。今は木々が生い茂ってよく見えません。
さらに休むことなく(!)池上方面へと歩き、表紙の口絵に使われた曙楼跡へと向かいます。かつて賑わっていた当時の面影はありませんでしたが、看板がありました。
日が暮れ始める頃に今度は池上本門寺へ。夕闇の中で文豪や有名人のお墓を教えてもらい、盛り上がりながら抜けていきます。本堂へ出た頃にはあたりはとっぷりと暗くなっていましたが、気にせず向かった先は良雄さんお気に入りの散歩先の一つ、『孤独の橋』です。散歩に出かける時の良雄さんは、いつでも句を詠めるように筆記用具を携帯していたそうです。
そのお気に入りの橋の下には、当時はなかった都営地下鉄浅草線(終点:西馬込駅)の引き込み線と車庫がありました。鉄道ファンが好きそうなその場所は、良雄さんによってそんな素敵な名前がつけられていたのですね。
ここでまだまだツアーは終わらず、池上梅園公園を通り過ぎて大坊本行寺へと向かいます。このお寺の境内で良雄さんを撮った写真があるということで、思い出の場所なのです。つい数年前に良雄さんが亡くなられたかのように詳しく懐かしそうに話すお二人の様子に、故人への強い愛情を感じました。
ツアーの最終地は東急池上線池上駅でした。3時間以上の長い散策の最後、洋子さんからの“皆さん、お疲れさまでした”の言葉に、先にこちらがお礼を言うべきなのに…と恐縮してしまいました。
お二人のお陰で本当に楽しいツアーとなりました。私は下調べをほとんどせずに出かけてしまったのですが、当時の街の様子その時代の生活も実際に知らなくとも、お二人の案内で文士村の雰囲気を、そして当時の馬込や池上界隈を実際に体感したかのような錯覚に、一瞬捉われました。帰りの東急線では、ツアーの内容と『昔日の客』を頭の中で繋げて反芻していました。関口良雄さんを憶う
『昔日の客』を読み返すたびにしみじみと余韻に浸っている読者の皆さん、来年の早いうちに夏葉社さんから素敵な復刊作品が届きます! 楽しみに待つことにいたしましょう。

スタッフ・加藤


ご来場ありがとうございました!(第45回西荻ブックマーク「古本・トロイカ・セッション」)

第45回西荻ブックマーク

今野スタジオマーレにて開催された「古本・トロイカ・セッション」。

ゲストは3人で、『彷書月刊』の編集長・田村治芳氏、石神井書林の内堀弘氏、ライターで均一小僧で、古本といえばこの人・岡崎武志氏。田村氏は前日まで無理だろうと予想されていたが、なんとか来ていただいて、本当にありがたい、豪華な顔ぶれとなった。

会場は40人が集まるほどの大盛況。3人のお話は滑らかに、田村氏のお話はゆっくりと、進んでいった。

トークの前に、西荻ブックマークのスタッフが、『彷書月刊』編集部を訪れる一場面がスクリーンに映し出された。
神保町の『彷書月刊』編集部は階段を上がると、そこには返本の山が……、そして中に入っても本の山、山、あるいは資料の山ばかり。所狭しと言わんばかりにうず高く本が積まれていた。
この神保町の編集部は3つめの場所で、そこから、青林堂のビルも更地になったと話題が移り、「更地になったとこを写真にとって、南伸坊に送った」と田村氏が言っていた。
すると岡崎氏が「僕は古本屋の外観の写真をとりだめしている」とコメントし、将来、高値になるぞ、と予言していたのが面白かった。岡崎氏の言うように、古本のガイド本などをみても、お店の外観はあまり写っていない。

次に『彷書月刊』のなりたちへと話は移行していく。
若月隆一氏が田村氏を編集長にした頃のお話。「彷書月刊」というタイトルは、若月氏の提案で、書物の中を彷徨う、書物をたずねるという意味があるということで、それに決定した。
本を売るには自家目録を作るか、『古書通信』にのせてもらうしかない、それで目録を作るときも90円で送れるように半分以下にしたという。

次に『彷書月刊』の歴史を飾った人達の話が出てきた。新劇といえばこの人、松本克平氏。名優だが、本も出していて、ファンに自分で売っていた。初代発行人の堀切氏が本を出したいといっていたという。日本の映画美術監督の木村威夫氏と、同人雑誌を作ったことがある田村氏は、彼に連載を頼んだこともあった。背広とネクタイで古本屋に行き、しかも均一台をあさるという福田豊氏のお話も出てきた。作家・五木寛之氏のエピソードも出た。彼は竹中英太郎氏への義理から特別に書いてくれたのだった。竹中氏は、五木寛之氏原作の映画に油彩の絵を描いていた。井伏鱒二氏にも執筆依頼したが、彼には書けませんと断られた。

300号も続いたのは毎回特集を組めるだけの多彩な執筆陣がいたということが大きい。だからこそ出会いが特集をつくるという、田村氏の言葉が印象的だった。おまけに「1に出久根、2に中山、3、4がなくて、後はずっとない」と会場を笑わせる一言もあった。編集部の外側だけではなく、内側の強力なメンバー・皆川秀氏の存在も忘れてはならない。彼が来てから編集の出来る雑誌になったと田村氏。インタビューの名人でもある皆川氏は後半の120冊を作った。

古本屋と雑誌作りが上手に連環した。雑誌の特集で要る文献が古本屋にあったりと、互いが孤立せずに連携していった。さらには岡崎氏が言うように、『彷書月刊』が、本の面白がり方を提案し続けたからこそ、ここまで続いた。

田村氏は「古本屋は客によって鍛えられる」と。客が皆、軽い本ばかり求めれば、そういう店になる。ただ、最近はそういう客がいないというか、いるんだが、見えにくくなっている、と語る。ネットや電子書籍の普及のせいで、方向性が見えにくくなってきた、とも。古本屋で新しいことを考える奴は皆無だ、と田村氏。たまに考える人がいる、それが北海道のサッポロ堂書店さんだ、と。この人は「環オホーツク」ということを考えた。日本で考えれば北海道は北方だが、北海道・シベリア・ロシアとこの3つで考えれば南方だと。内堀氏は「全く新しいものを作るのは難しいが、今まであったものを違った風に見る」と言い、岡崎氏も「本を買っていくと物の見方がどんどん狭くなっていく」と。古書会館で、年配の客が「何にもいい本がないのう」と言ったとき、田村氏は「こんなにあるじゃないか」と言った場面を語った。

『彷書月刊』は中綴じから平綴じへと変わっていくが、平綴じの頃は『図書』『波』といったPR誌と見た目が同じで、書店で「え、これ、売るの?」と皮肉を言われた、というほろ苦いネタも出てきた。そんな『彷書月刊』がここまで続くと思っていたか、と岡崎氏に聞かれた田村氏は、定期購読者を3ヶ月・半年・1年の3種類で募集した時に、一番多かったのが半年で、まぁ半年位は続くだろうと思った、と答えていた。

岡崎氏が感動したという『彷書月刊』2008年9月号にポラン書房の石田氏が書いた文章を朗読。「本があれば人はきっときてくれる」という一文が印象的だった。さらに「本の力をないがしろにする巨きな力は、人と人、人とモノとのつながりを引き裂く方にも作用しているようです」と深い言葉で締めくくり、休憩。

後半は『昔日の客』の話でスタート。
関口良雄氏は、大森で25年、山王書房という屋号で古本屋をしていた人で、『昔日の客』は1000部刷られた。
そして、今年、夏葉社から『昔日の客』が復刊された。この夏葉社というのは島田潤一郎氏が一人でやっている超零細出版社だ。

『レンブラントの帽子』の次に『昔日の客』をやるとは!と岡崎氏が驚きを隠さずに理由を尋ねる。島田氏は古本屋の人たちに京都の「善行堂」に行けと言われて、行ったそうだ。梅田の紀伊国屋書店でさえ、『レンブラントの帽子』は10冊しか置いてくれないのに、善行堂は30冊も置いて、しかも売り切ってくれた。そこから、山本善行氏のブログに、『昔日の客』を島田氏に頼んでみようか、と知らない間に書かれていた、と会場を笑いに包む。

会場には関口氏の奥様とご子息も見えていた。ご子息は復刊する本のことで島田氏と何度も話し合われた。この本は何ともいえない布の表紙のてざわりがいい。これは布にしてほしいとご子息が希望をだされ、島田氏も普通のハードカバーで出すよりは30万は高くなるが、OKしたのだ。この本について田村氏が毒舌全開。布はすぐに手ずれをするから、新刊書店で売り切らないとね、と島田氏に忠告。古本屋に流れたら、すぐに一万円になるよ、と。会場の人は殆ど買われました(笑) 表紙を開くとすぐにある山高登氏の版画もご子息がリクエストされた。

「森崎書店の日々」という映画の1シーンでこの本がちらっと登場する。それを聞いただけで、この映画を見なければ、と思ってしまう。書店員が『愛についてのデッサン』という本を読む場面で、カウンターにおかれているのがこの本なのだ。

山王書房では売り上げゼロの日はなかったというエピソードも出た。

ラストはじゃんけん大会となる。音羽館さんからのプレゼント本や、今日のゲスト3人のサイン色紙などをかけてのバトルがしばし繰り広げられて終了。

スタッフ:増田

» 出演者のお一人、岡崎武志さんによるレポートはこちら
西荻の夜 – okatakeの日記 http://d.hatena.ne.jp/okatake/20100927