【特別企画展+シンポジウム】「山上の蜘蛛――神戸モダニズムと海港都市」

第3回・第45回に出演された古書肆石神井書林・内堀弘さん、第37回に出演された扉野良人さんが登壇される、神戸でのモダニズム詩シンポジウムのお知らせです。

【特別企画展+シンポジウム】
「山上の蜘蛛――神戸モダニズムと海港都市」
行吉学園創立70周年記念事業

特別企画展「山上の蜘蛛-神戸モダニズムと海港都市」
日時:2010年11月3日(水)~16日 *最終15:00まで
場所:神戸女子大学教育センター 1階ホール
電話078-231-1001
〒650-0004 神戸市中央区中山手通り2-23-1
入場料:無料
戦前神戸で刊行されたモダニズム系詩誌を中心とした展示。
神戸詩人事件の「神戸詩人」「牙」、リアン浅間事件の「リアン」、 京大俳句事件の「京大俳句」、大岡昇平の「ブランコ」、 中桐雅夫の「LUNA」、吉行エイスケの「売恥醜文」 など30点を展示。
オープニングシンポジウム「モダニズム詩の断層」
日時:2010年11月3日(水) 14:00 ~ 16:00
場所:神戸女子大学教育センター 5階特別講義室
コーディネーター・・・季村敏夫
パネリスト 内堀 弘(石神井書林 『ボン書店の幻』ちくま文庫)
間村俊一(装丁家 画集『ジョバンニ』洋々社ほか)
扉野良人(僧侶、詩人 『ボマルツォのどんぐり』晶文社)
» 詳細はこちらから
神戸女子大学|2010年度Events詳細|行吉学園創立70周年記念 特別企画展「山上の蜘蛛-神戸モダニズムと海港都市」
http://www.yg.kobe-wu.ac.jp/wu/events/2010/main_101103.html

ご来場ありがとうございました!(第45回西荻ブックマーク「古本・トロイカ・セッション」)

第45回西荻ブックマーク

今野スタジオマーレにて開催された「古本・トロイカ・セッション」。

ゲストは3人で、『彷書月刊』の編集長・田村治芳氏、石神井書林の内堀弘氏、ライターで均一小僧で、古本といえばこの人・岡崎武志氏。田村氏は前日まで無理だろうと予想されていたが、なんとか来ていただいて、本当にありがたい、豪華な顔ぶれとなった。

会場は40人が集まるほどの大盛況。3人のお話は滑らかに、田村氏のお話はゆっくりと、進んでいった。

トークの前に、西荻ブックマークのスタッフが、『彷書月刊』編集部を訪れる一場面がスクリーンに映し出された。
神保町の『彷書月刊』編集部は階段を上がると、そこには返本の山が……、そして中に入っても本の山、山、あるいは資料の山ばかり。所狭しと言わんばかりにうず高く本が積まれていた。
この神保町の編集部は3つめの場所で、そこから、青林堂のビルも更地になったと話題が移り、「更地になったとこを写真にとって、南伸坊に送った」と田村氏が言っていた。
すると岡崎氏が「僕は古本屋の外観の写真をとりだめしている」とコメントし、将来、高値になるぞ、と予言していたのが面白かった。岡崎氏の言うように、古本のガイド本などをみても、お店の外観はあまり写っていない。

次に『彷書月刊』のなりたちへと話は移行していく。
若月隆一氏が田村氏を編集長にした頃のお話。「彷書月刊」というタイトルは、若月氏の提案で、書物の中を彷徨う、書物をたずねるという意味があるということで、それに決定した。
本を売るには自家目録を作るか、『古書通信』にのせてもらうしかない、それで目録を作るときも90円で送れるように半分以下にしたという。

次に『彷書月刊』の歴史を飾った人達の話が出てきた。新劇といえばこの人、松本克平氏。名優だが、本も出していて、ファンに自分で売っていた。初代発行人の堀切氏が本を出したいといっていたという。日本の映画美術監督の木村威夫氏と、同人雑誌を作ったことがある田村氏は、彼に連載を頼んだこともあった。背広とネクタイで古本屋に行き、しかも均一台をあさるという福田豊氏のお話も出てきた。作家・五木寛之氏のエピソードも出た。彼は竹中英太郎氏への義理から特別に書いてくれたのだった。竹中氏は、五木寛之氏原作の映画に油彩の絵を描いていた。井伏鱒二氏にも執筆依頼したが、彼には書けませんと断られた。

300号も続いたのは毎回特集を組めるだけの多彩な執筆陣がいたということが大きい。だからこそ出会いが特集をつくるという、田村氏の言葉が印象的だった。おまけに「1に出久根、2に中山、3、4がなくて、後はずっとない」と会場を笑わせる一言もあった。編集部の外側だけではなく、内側の強力なメンバー・皆川秀氏の存在も忘れてはならない。彼が来てから編集の出来る雑誌になったと田村氏。インタビューの名人でもある皆川氏は後半の120冊を作った。

古本屋と雑誌作りが上手に連環した。雑誌の特集で要る文献が古本屋にあったりと、互いが孤立せずに連携していった。さらには岡崎氏が言うように、『彷書月刊』が、本の面白がり方を提案し続けたからこそ、ここまで続いた。

田村氏は「古本屋は客によって鍛えられる」と。客が皆、軽い本ばかり求めれば、そういう店になる。ただ、最近はそういう客がいないというか、いるんだが、見えにくくなっている、と語る。ネットや電子書籍の普及のせいで、方向性が見えにくくなってきた、とも。古本屋で新しいことを考える奴は皆無だ、と田村氏。たまに考える人がいる、それが北海道のサッポロ堂書店さんだ、と。この人は「環オホーツク」ということを考えた。日本で考えれば北海道は北方だが、北海道・シベリア・ロシアとこの3つで考えれば南方だと。内堀氏は「全く新しいものを作るのは難しいが、今まであったものを違った風に見る」と言い、岡崎氏も「本を買っていくと物の見方がどんどん狭くなっていく」と。古書会館で、年配の客が「何にもいい本がないのう」と言ったとき、田村氏は「こんなにあるじゃないか」と言った場面を語った。

『彷書月刊』は中綴じから平綴じへと変わっていくが、平綴じの頃は『図書』『波』といったPR誌と見た目が同じで、書店で「え、これ、売るの?」と皮肉を言われた、というほろ苦いネタも出てきた。そんな『彷書月刊』がここまで続くと思っていたか、と岡崎氏に聞かれた田村氏は、定期購読者を3ヶ月・半年・1年の3種類で募集した時に、一番多かったのが半年で、まぁ半年位は続くだろうと思った、と答えていた。

岡崎氏が感動したという『彷書月刊』2008年9月号にポラン書房の石田氏が書いた文章を朗読。「本があれば人はきっときてくれる」という一文が印象的だった。さらに「本の力をないがしろにする巨きな力は、人と人、人とモノとのつながりを引き裂く方にも作用しているようです」と深い言葉で締めくくり、休憩。

後半は『昔日の客』の話でスタート。
関口良雄氏は、大森で25年、山王書房という屋号で古本屋をしていた人で、『昔日の客』は1000部刷られた。
そして、今年、夏葉社から『昔日の客』が復刊された。この夏葉社というのは島田潤一郎氏が一人でやっている超零細出版社だ。

『レンブラントの帽子』の次に『昔日の客』をやるとは!と岡崎氏が驚きを隠さずに理由を尋ねる。島田氏は古本屋の人たちに京都の「善行堂」に行けと言われて、行ったそうだ。梅田の紀伊国屋書店でさえ、『レンブラントの帽子』は10冊しか置いてくれないのに、善行堂は30冊も置いて、しかも売り切ってくれた。そこから、山本善行氏のブログに、『昔日の客』を島田氏に頼んでみようか、と知らない間に書かれていた、と会場を笑いに包む。

会場には関口氏の奥様とご子息も見えていた。ご子息は復刊する本のことで島田氏と何度も話し合われた。この本は何ともいえない布の表紙のてざわりがいい。これは布にしてほしいとご子息が希望をだされ、島田氏も普通のハードカバーで出すよりは30万は高くなるが、OKしたのだ。この本について田村氏が毒舌全開。布はすぐに手ずれをするから、新刊書店で売り切らないとね、と島田氏に忠告。古本屋に流れたら、すぐに一万円になるよ、と。会場の人は殆ど買われました(笑) 表紙を開くとすぐにある山高登氏の版画もご子息がリクエストされた。

「森崎書店の日々」という映画の1シーンでこの本がちらっと登場する。それを聞いただけで、この映画を見なければ、と思ってしまう。書店員が『愛についてのデッサン』という本を読む場面で、カウンターにおかれているのがこの本なのだ。

山王書房では売り上げゼロの日はなかったというエピソードも出た。

ラストはじゃんけん大会となる。音羽館さんからのプレゼント本や、今日のゲスト3人のサイン色紙などをかけてのバトルがしばし繰り広げられて終了。

スタッフ:増田

» 出演者のお一人、岡崎武志さんによるレポートはこちら
西荻の夜 – okatakeの日記 http://d.hatena.ne.jp/okatake/20100927

nbmチラシ最新版配布中!

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文庫本のカバーとしてご利用いただけます!!

デザイン:原田史子

hand今後のイベント情報はこちらから!!
イベント情報

配付場所:

  • 古書 音羽館(西荻北)
  • 信愛書店(西荻南)
  • 高円寺文庫センター(高円寺)
  • 茶房 高円寺書林(高円寺)
  • 今野書店(西荻北)
  • なずな屋(西荻北)
  • 旅の本屋 のまど(西荻北)
  • 物豆奇(西荻北)
  • にわとり文庫(西荻北)
  • 三人灯(西荻北)
  • BASARA BOOKS(吉祥寺)
  • ささま書店(荻窪)
  • 都丸書店(高円寺)
  • コクテイル書房(高円寺)
  • えほんやるすばんばんするかいしゃ(高円寺)
  • 古楽房(高円寺)
  • 本の家(高遠)
  • 6次元(荻窪)
  • beco cafe(西荻北)
  • ミシェル喫茶室(松庵)
  • クワランカカフェ(西荻北)
  • 古書 花鳥風月(西荻北)
  • ひぐらし文庫(雑司ヶ谷)
  • 百年(吉祥寺)
  • トムズボックス(吉祥寺)
  • 世田谷文学館(芦花公園)
  • よみた屋(吉祥寺)

第45回西荻ブックマーク、満員御礼となりました!

今週末、9月26日(日)の
第45回西荻ブックマーク
「古本・トロイカ・セッション ~『彷書月刊』休刊から『昔日の客』復刊まで~」、
ご予約が定員に達しましたので、ご予約の受付を締め切らせていただきます。
たくさんのご予約をどうもありがとうございました。
なお、キャンセル待ちでの参加予約をご希望の方は、予約メールフォームより、
その旨をお書き添えの上、ご送信ください。
ご予約のみなさま、イベント当日、スタジオマーレにてお待ちしています。
『彷書月刊』は前日9月25日発売の300号をもって休刊となります。
» 田村七痴庵(治芳、彷書月刊編集長)さんが「日本の古本屋メールマガジン」第94・8月25日号に寄稿した「『彷書月刊』300号について」がこちらで読めます。
http://www.kosho.ne.jp/melma/magazine20100825.html
『昔日の客』復刊についての最新情報は、版元の夏葉社のサイトで確認できます。
» 夏葉社
http://natsuhasha.com/
【9/24追記】復刊『昔日の客』、第45回ブックマーク会場にて、先行販売予定!

関口良雄『昔日の客』、ついに復刊!

第33回西荻ブックマーク「『昔日の客』を読む ~大森・山王書房ものがたり~」で取り上げた幻の名作『昔日の客』の復刊が決定しました!
10月上旬発売
関口良雄『昔日の客』
発行:夏葉社

2200円+税(予価)/四六判上製/232頁
ISBN978-4-904816-01-1 C0095

野呂邦暢、上林暁、尾崎一雄、尾崎士郎、三島由紀夫、沢木耕太郎といった作家たちが愛した、東京大森の小さな古本屋。それが、『山王書房』です。店主である関口良雄が綴った、作家たちとの交流と、古本と文学に対するあふれんばかりの愛情は、没後、『昔日の客』という書籍にまとめられ、以後、知る人ぞ知る幻の名著として、長い間、古本好きたちに熱心に探され、そして、愛されてきました。実に、32年ぶりの復刊。心があたたまります。

『昔日の客』と関口良雄の名は、野呂邦暢のエッセイ集『夕暮の緑の光』(みすず書房)、沢木耕太郎のエッセイ集『バーボン・ストリート』(新潮文庫)においても、感動的に綴られています。岡崎武志氏をはじめとする、古本巨匠たちの多くも、本書を絶賛し、復刊を祝福しています。