ご来場ありがとうございました!(第39回西荻ブックマーク「私は古本ストーカー」)

第39回はご存知「なないろ文庫ふしぎ堂」店主であり、
『彷書月刊』編集長でもある田村七痴庵さんと映画『私は猫ストーカー』
原作で有名なイラストレーターの浅生ハルミンさんの異色対談でした。
このコンビじつはかつて店主とアルバイトという関係でありまして、
このたび師弟対談が実現する運びとなりました。

当日の会場、スタジオ・マーレは超満員。顔なじみの古書店主、ライター、
編集者の顔もちらほらお見かけいたします。お二人の気楽な話しぶりから
時折繰りだされる意味深な発言に会場は大いに沸きました。

また会場ではハルミンさんの書籍のほか、
ちょうどタイムリーに刊行された2冊の雑誌も販売されました。

  • 『彷書月刊』2月号の田村さんの特集号
  • 『雲遊天下』101号(復刊号) 特集・雑誌のゆくえ (田村さんインタビュー収録)

これは現在も発売中ですのでぜひお手に取ってご覧ください。

それでは岡崎武志さんのブログに当日のレポートがあります。
お借りしましたので、会場の雰囲気を味わってください。

スタッフ:広瀬

ハルミンさんは「なないろ」バイトの「志願兵だった」。つまり、お金より、古本屋そのものに興味があり、自分から手を挙げて「なないろ」に店番をした。「バイト料は安かったけど」(田村)「そんなことはないです」(ハルミン)。田村さんは人手に困ると、「美学校」へ、ブラブラしている若者を探しに行ったようだ。そこでハルミンさんが拾われる。ハルミンさんは3年ほど、週に一日、「なないろ」のバイトをするが、「私は本当に丸腰だった」(古本のことは何も知らない、の意)。この「志願兵」だの「丸腰」という表現がおもしろい。古本屋に対する熱、意気込みを感じる。

当時の田村さん。まだ三十代だが、ハルミンさんの目に映ったのは、腰まで長い髪を伸ばし、田村さん以外は誰も着ないような服に身を包んでいた。それがかっこ良かった。店番をしていると、田村さんは「それじゃあ、頼むわ」と言って外出していくのだが、外で何をしているのかがまったくわからなかったという。

田村さんが謎なら、客も謎だらけで、いつもエロ本をずっと見て帰っていくおじいさんがいた。松本清張みたいな唇のじいさんで、長時間女性の裸を見ていると、次第に耳が赤く染まっていくのをハルミンさんは見逃さなかった。バイトの先輩・タカクラくんによると「あのじいさんは、○○に住んでいて、エロ本のコレクターだよ」。「なんで、タカクラがそんなこと知ってんだ!」と田村さん。

相撲取りになれと言われる程身体の大きな小学生がいた(「私は古本ストーカー」のチラシで、電話の下でしゃがんでいるコドモ)。小三のタケオは店内に貼った上半身裸の舞踏のポスターに映ったオトコの脇毛を指差し「これ、何て言うの?」と、ハルミンさんにしつこく「脇毛」と言わせたがった。

田村さん曰く、歴代のバイトで便所掃除をすすんでしたのはたった二人(田村さんはせよ、と言わない)。するとハルミンさんが「そのうちの一人は、当時つきあっていた私の彼氏です」と言った。ハルミンさんが急きょバイトを休む用ができて、彼氏が代わって「なないろ」へ。この彼氏がまことに几帳面、綺麗好きな男で、便所を見るにみかねて掃除した。

「なないろ」に古本を持ちこむ常連にKとTがいたが、Kはプロで、いい本を拾って、ちゃんと仕分けして、いちばん高く買う古本屋へ持ち込む。SM雑誌でもある程度の量が必要で、それを駅前のコインロッカーを倉庫替わりにして溜め込んでいた。ハルミンさんはこのKさんから寒い日に暖かい缶コーヒーをもらったことがある。ハルミンさんがKさんに、どこで本を拾ってくるのか、と聞いたことがある。Kさん曰く「あのね、内幸町と日比谷あたりがいいよ」。行動範囲の広さがすごい。田村さんは毎年、このKさんから年賀状をもらっていた。しかし、宿無しなので、住所はなく名前だけ。

田村さんは「三宿の江口書店こそ古本屋のなかの古本屋だ」と言っていた。ハルミンさんも江口書店が好きで、看板の「雑本」という文字に引かれていた。まさしく江口は雑本の店だった。とびきりいいことば、かっこいいことばとして「雑本」を意識していたが、友人に江口書店のことを説明するとき、「雑本の店で」と言うと、友だちが「ええっ、雑本なんて言うの、ひどいよ」と反応があり,逆に驚いたのだ。田村さんは言う。「雑草という草はないが、雑本という本はたしかにあるんだ」

江口さんは最後、失禁しながらも店番を続けていた。おしっこもらしながらも古本屋の店番をする江口さんに田村さんは感動する。つまり最後まで「古本屋」だった。

ハルミンさんに原稿を依頼したのが田村さんで、ハルミンさんはまだ何ものでもない私に依頼するなんて、その勇気におどろいたという。ただ、現在「にわとり文庫」に嫁入りした西村博子さんと二人で、「特急電車で家出」というミニコミを作っていて、それを田村さんに見せていたらしい。

「彷書月刊」つげ義春特集号(1991年)に書いた「古書談義 古本屋さん」だが、ここにナゴヤの古本屋で教わった、下郷羊雄がサボテンばかりを撮ったシュールリアリズム写真集『メセム属』について書いた。まだ二十代の女の子が、『メセム属』について書くなんて、とここで田村さんが驚く。

田村さんは「なないろ」の二階の四畳半を倉庫兼住居にしていたが、ガス台以外、電化製品はなにもなかった。ハルミンさんは、じつは田村さんがルスのとき、こっそりこの二階を覗いている。「部屋中、本が積み上げてあって、あんなに高く本が積めるものだと感心した。部屋のまんなかにぺったんこになった蒲団が敷いてあって、小さな窓から光がさしこんでいた。小さな机の上には、かきかけの目録用原稿が置いてあった」と描写する。

このほか、まだまだ面白い話が続くのだが、最後に田村さんが吐いた名言。田村さんの住むマンションのゴミ捨て場に、ある日、リボンのかかった遺影や「忌中」という紙や葬式写真など、葬式に使う一切のものが捨ててあった。マンションの管理人は「こんなものを捨てて」と怒ったが、古本屋の田村さんとしては、一瞬「俺がもらおうかな」と思ったという。そのあとにこう言った。

「古本屋ってのは奈落と直結した商売なんだ」

――私は古本ストーカー – okatakeの日記


第39回西荻ブックマーク、満員御礼となりました!

今週末、1月31日(日)の

第39回西荻ブックマーク
「私は古本ストーカー 田村七痴庵独演会 Part3 ~彷書月刊編集長と浅生ハルミンの奇妙な関係~」、

ご予約が定員に達しましたので、ご予約の受付を締め切らせていただきます。
たくさんのご予約をどうもありがとうございました。

なお、キャンセル待ちでの参加予約をご希望の方は、予約メールフォームより、
その旨をお書き添えの上、ご送信ください。

ご予約のみなさま、イベント当日、スタジオマーレにてお待ちしています。

※田村治芳さん特集「ボロをつむぐ 勝手ながら七痴庵戯文録」の
『彷書月刊』最新号(2010年2月号)、発売中です!


第39回西荻ブックマーク

2010年1月31日(日)
「私は古本ストーカー」
田村七痴庵独演会 Part3
~彷書月刊編集長と浅生ハルミンの奇妙な関係~

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イラスト/ 浅生ハルミン

会場:今野スタジオマーレ
開場16:30/開演17:00
料金:1500円(会場でお支払い下さい)

定員30名 要予約

ある時は古本と古本屋をめぐるリトルマガジンの編集長。ある時は「なないろ文庫ふしぎ堂」の店主、田村七痴庵。ついに正体が浅生ハルミンさんによって解き明かされます。練馬の「ポラン書房」、千駄木の「古書ほうろう」に続いての独演会・第三弾!


彷書月刊編集長

田村七痴庵(たむら・ななちあん)
田村治芳(たむら・はるよし)。1950年、和歌山県生まれ。『彷書月刊』編集長。なないろ文庫ふしぎ堂店主。

浅生ハルミン(あさお・はるみん)
三重県生まれ。イラストレーター、エッセイスト。著書に『私は猫ストーカー』『帰って来た猫ストーカー』(ともに洋泉社)、『ハルミンの読書クラブ』(彷徨舎)、『猫座の女の生活と意見』(晶文社)等がある。また映画『私は猫ストーカー』(2009年公開)の原作者でもある。


nbm第36-40回チラシ

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デザイン・イラスト:デザインコンビ http://design-combi.com/

配付場所:

book_mini古書 音羽館 西荻北
book_mini信愛書店 西荻南
book_mini高円寺書林 高円寺
book_mini高円寺文庫センター 高円寺
book_mini今野書店 西荻北
book_mini興居島屋 西荻北
book_miniにわとり文庫 西荻南
book_mini旅の本屋のまど 西荻北
book_mini雨と休日 西荻南
book_mini三人灯 西荻南
book_miniクワランカ カフェ 西荻北
book_mini三月の羊 西荻北
book_mini盛林堂書房 西荻南
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book_miniALICECAFE 西荻南
book_miniFALL 西荻北
book_mini茶舗あすか
(西荻まちメディア西荻窪駅前案内所)
西荻北

book_miniBASARA BOOKS 吉祥寺
book_mini古書ほうろう 千駄木
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book_mini古本すうさい堂 吉祥寺
book_mini古本屋さんかく 吉祥寺
book_mini百年 吉祥寺
book_mini古本よみた屋 吉祥寺
book_miniトムズボックス 吉祥寺
book_mini東京古書会館 御茶ノ水
book_miniポスターハリスギャラリー 渋谷

ほか