ご来場ありがとうございました!(第73回西荻ブックマーク「井村君江の妖精の森」)

第73回西荻ブックマーク

秋晴れと呼ぶにふさわしい、澄みわたった青空がまぶしい10月13日の午後、第73回西荻ブックマーク「井村君江の妖精の森」が開催されました。
開催の3時間ほど前、わたしたち西荻ブックマークスタッフは、宇都宮から見えられた井村君江先生と助手の矢田部健史さんをJR西荻窪駅改札前にて、お迎えにうかがいました。
井村先生はここへ来られる電車中においても、本日の講義内容について、助手の矢田部さんと議論を交わしていたようす。先生方の熱気が伝わってきて、講義への期待が高まってしまいます。
こけし屋の別館1Fレストランにて、こけし屋お勧めメニューのハヤシライスとコロッケを食べながら、直前の最終打ち合わせに入ります。
同こけし屋別館2Fが会場となります。
開場前に、井村先生が今回用意されたレジュメテキスト「人間と植物 -シシリー・メアリー・バーカーの世界―」をお客さまの席に配布しておきます。
来年2月末刊行予定のシシリー・M・バーカー作、井村君江訳『花の妖精たち』(主婦の友社)の先行予約チラシも配ります。たいへん秀麗なチラシです。
入口付近の物販のテーブルコーナーには、新刊の「絵本画家 天才たちが描いた妖精」(中経出版)をはじめとして、井村先生お蔵出しの書物やDVDがぎっしり並べられます。
第73回西荻ブックマーク井村先生もご入場され、17時、いよいよ講演会開始です。
進行役を助手の矢田部さんがつとめてくれます。
矢田部さんの冒頭の挨拶。今回の物販の紹介や、井村先生の最近掲載された雑誌記事の紹介など。ユーモアを交えつつの紹介なので、会場からは笑いが生じていました。
井村先生から、ご挨拶のあと、今回のテーマである「人間と植物」には3つのテーマがあることが告げられます。
1 日本に妖精を広めた絵画師であるシシリー・メアリー・バーカーの紹介
2 人間とゆかりの深い植物、花と木の個別紹介
3 植物は、観賞、食用、遊戯、薬剤という面において、人間が暮らす上での必需品であり、生命の源であること

まずは、イギリスの挿絵画家シシリー・メアリー・バーカーの紹介。
チラシとしても配布してあります来年2月刊行予定の「花の妖精たち」の特色について。
翻訳は井村先生による全面新訳であり、原文や、掲載されている花の植物学上の学術名解説も記載された研究書としても充実した内容であることが告げられます。
シシリー・メアリー・バーカーは、森永のチョコレート「ハイクラウン」のおまけとして、1976年からつけられていたフェアリーカードの画師として、日本でも名高いことが、告げられると、会場の当時を知る年代の方から、どよめきの声があがりました。
会場内のプロジェクターには、シシリーの肖像画や故郷であるロンドンの南にあるクロイドンの光景が映し出されます。
子供の頃はたいへん身体が弱く、学校に通えないほどで、家庭教育がほどこされたこと、絵は父親から習ったことなど、生い立ちから、晩年のことまでが語られます。
シシリーは、生涯、結婚もせず、子供も持たず、どうやらお墓もないようす。
なんともさみしい晩年だったようですが、井村先生から、火葬されたのち、彼女の灰は地に撒かれて自然に還り、イギリスの野に咲くワイルド・ローズ、美しいバラのような花として咲いたと力強く説かれると、まるで新しい生命を吹きこまれたようでした。
お話は、このバラという言葉から、テーマ2つめの主題「花と木の個別紹介」バラへとあざやかに移ります。
古代バビロニアの「ギルガメッシュ叙事詩」から聖書、バラと文学からはじまり、香水や紅茶としてのバラと人間のかかわりが語られます。
なのですが、ここで第1部は時間の関係で終了。
「まだはじめのひとつなのに」と井村先生もたいへん残念そうでした。
休憩時間は物販の先生お蔵出しの書物やDVDは好評で飛ぶように売れていました。
先生にサインをお願いされるお客さまも。こちらは希望者が多く、休憩時間内では終わらないので、のちほどとなってしまいましたが。
第2部では、続きとして、ゴボウや、植物雑草、サクラ属のハーブであるスローをめぐるアップルシードやカルヴァドスのお酒の紹介、ラベンダーとマザーグースのもじり唄についてなど、わたしたちの身近な生活に親しい植物の間柄がレジュメに沿って語られていきます。
同じ植物でも、日本と外国では接し方が異なる点(ヨーロッパではゴボウを食用としない)など、興味深い話もうかがえます。
1部とは変わって、いくらかテンポが速い状態になりながらも、先生ならではの楽しい話題の脱線もありました。
クロッカスまで話が進んだとき、この植物名こそ、クロイドンの地名の語源であることが説明されます。クロイドン、井村先生が、会場のみなさんに喚起されるように呼びかけます。そう、シシリー・メアリー・バーカーの出生地です。
なんとかお話が、最後のヒナゲシ、コクリコまで到達したところで、まことに無情ながら、お時間が来てしまいました。
なんとも、先生のお話は序論で終わってしまった印象が強いです。6時間くらいもうければ、すべてをお話しいただけたのに、とイベント主催側も無念でなりませんでした。
公演終了時刻の19時には、すっかりあたりは暗くなっていました。
西荻の秋のたそがれどきに、夢のようにあらわれた妖精の森は、女王陛下の語りが終わるとともに、その姿を消してしまったのでした。
来場者の皆様、いっときの幻におつきあいいただき、まことにありがとうございました。
でも、本日お渡ししたレジュメや、来年2月に刊行予定の著作、そして、井村先生の不思議な熱を帯びた語りは、聞きに来られた皆様の心のなかに忘れがたい余韻を残したと信じます。
井村先生は、助手の矢田部さんとともに、この日のうちに宇都宮に無事にお帰りになられました。
会場をお貸しくださった、こけし屋さまからは、多大なるご協力いただきました。
みなさま、改めまして、ありがとうございました。

第73回西荻ブックマーク

(掲載写真は、フェアリー協会の吉田さまから、提供いただきました。)

(スタッフ:添田)


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