ご来場ありがとうございました!(第63回西荻ブックマーク「わたしとお店とその日常 女性店主トーク」)

第63回西荻ブックマーク

ひぐらし文庫(原田真弓さん)と蟲文庫(田中美穂さん)のトークイベントが、こけし屋別館にて6月2日の18時より開催された。
「本屋は死なない」(石橋毅史氏、新潮社)で紹介された原田さんと、「わたしの小さな古本屋」(洋泉社)を出された田中さん。

やや硬い雰囲気でスタートしたものの、原田さんが田中さんに「たくさん聞きたいことがあるんです」とご自分から質問されたあたりから、徐々に硬さもとれていった。
本の内容とはかぶらないようにしつつも、未読のひとたちにも分かるようにと、お2人が本屋を始められた経緯から始まっていく。
田中さんは古本屋を営んで18年。だが、古本屋を開店した当時は、本屋での勤務経験があるでもなく、古本屋で修行したわけでもなく、いきなり、古本屋の世界に飛び込んだ。身近にたくさん、頼れる同業者の知り合いがいるでもなく、手さぐりで始める。

一方、原田さんは書店員としての経験をひっさげて2年前に「ひぐらし文庫」を開店。
新刊も古本も雑貨も置く。あえて、古本屋とか新刊書店といったくくりに縛られたくないというお話だった。
印象的だったのは本好きをターゲットというより、テレビなどで話題になっている本などを見て店にくる、そういう、本をよく読む層の一歩手前の人たちをターゲットにされているような気がした。
このお2人の店はことごとく違う。共通点をあげるとしたら、女性店主であり、店の所在地の地域性を非常に大事にされていることだ。
原田さんのお店は雑司が谷の商店街の中だ。「手創り市」という手づくり作家が集まる市が定期的に開催される鬼子母神の神社の近くなので、作家性を重視して、雑貨などは買い付けに行くとのこと。
かたや、田中さんのお店は倉敷の美観地区にある。本などに見向きもしない観光客がふらっと入ってくることもある。蟲文庫も古本だけではない、古本が9割以上と田中さんはおっしゃっていたが、他にもCDや雑貨も置いているとのこと。
田中さんが新刊を置きだしたのは最近になってのことだというのが興味深かった。開店した当時は、古本屋が新刊を積極的に置くような傾向はなかったのだろう。
18年ものキャリアを積んだ田中さんでさえ、いまだに買取りはこわいというのが、言葉に重みがあった。
そんな蟲文庫が 、未だに売上げゼロの日がないというのが、もう、参りましたの一言に尽きる。地域に愛されて、重宝されているお店なんだなというのがよくわかる。
後半は会場の人たちのアンケートに記入された質問をお2人にすることで、あっという間に時間が過ぎていった。女性店主ということで、1人で店番していて、怖い思いをしたことはないかといった質問も出た。幸いにもそんな恐ろしい場面に出くわしたことはないとのお答えだが、ひぐらしさんが、ちょっと腕に覚えありと、さらりとおっしゃていたのが面白かった。
古本屋って利益は出るのか、などといったお2人が答えにくいような、しかし話し出すとどこまでもきりがないといったストレートな質問も多かった。
ひぐらしさんが新刊を買いつけに行っているというお話もあり、このへんを個人的にはもっと詳しく聞きたかった。
この会場に古本屋になりたいという人はどのくらいいたのだろう。どちらかというと古本屋志望の人より、このお2人の話が聞きたくて来たという方の方が多かったのかもしれない。そんなことを思いながら聞いていた。

(スタッフ・増田)


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