今年のはじめから、超短編のみなさんと打ち合わせをはじめていた、このイベントも、幾多の困難を乗り越えて、年の瀬も間近なこの季節に、いよいよ実現のときを迎えることとなりました。
一年の締めくくりにふさわしいにぎやかなイベントになったと思っています。
年末のあわただしく、寒い上に天候もすぐれないなか、お越しいただいたみなさまには心から感謝しております。
物販会場では、『超短編の世界』ほか、ゲストの佐藤弓生さんの歌集、超短編作家さんによる手作り感あふれる豆本や、特製本が売られています。
第一部のトークショー。
超短編のタカスギシンタロさん、松本楽志さんと本日のゲストの佐藤弓生さんの超短編とはなにか、のトーク。
稲垣足穂をはじめとして、文献も紹介されます。
3人とも書き手であり、書き手としての超短編作品という切り口でのトークが長く展開されました。タカスギさんの、冗談ともなんともつかない、どこかとぼけた味わいのびっくり発言が、会場に笑いの渦を発生させたりしました。
「超短編はまだ、発展途上である」という趣旨の発言がたいへん心強いものに感じられました。佐藤弓生さんは、先の日本ホラー小説大賞短編部門を受賞された田辺青蛙氏『生き屏風』収録の「猫雪」にも言及されていました。
そんなこんなで、あっというまの45分。
第二部は、超短編作家による単独朗読会。
トップバッターは実績ある実力派、五十嵐彪太さん。落ちついた安定感の朗読で、文字通り異世界(足の裏)へといざなってくれます。
続く、マンジュさんこと圓眞美さんのしっとりボイスの朗読は、包みこんでくる優しさで、この空間に身をゆだねられる幸せを実感させてくれます。
世界の豆本作家、赤井都さんは、テーブル台に手製の豆本をおいての朗読。前説がすでに作品世界の朗読であるようで、聞く人を不思議な世界へと連れて行ってくれます。
松本楽志さんは、男性パートならではの勇姿で朗読。一部のトークショーでもあったように、500文字と800文字作品の長さの違いを実証してくれます。西荻にちなんだ作品も朗読。
やまなかしほさんは、本を手に、絵になる立ち姿で、安定感のある朗読。この日の天候にあった朗読作品でした。
佐藤弓生さんは、高階杞一さんの作品を朗読。ご自身の作品も朗読されます。このあでやかな立ち姿をとくとごらんあれ。会場では、このたぐいまれなき才能が存在感を放ちつつ、燦然と輝いておりました。
タカスギシンタロさんは、イケメンのベーシスト、シライシケンさんの伴奏ありで朗読。会場のみなさんにそれぞれのこころのなかでおみくじをひいてもらうパフォーマンスとともに、超短編作品が読まれます。タカスギさんのなんともとぼけたような独特な味わいの声と語りが作品の雰囲気をかもしてくれます。最後は文字通り、花開くようなあでやかな演出で、まさしく有終の美を飾ってくださいました。
さて、つづいて、公募した、山下昇平画伯の手首オブジェをモチーフにした超短編の大賞受賞作、および個人賞、佳作作品の発表です。
展示されていた、山下さんオリジナルのトロフィーは会場内においても、異彩を放っておりました。
タカスギさん、松本さん、佐藤弓生さん、迫水由季さん、山下昇平さんが舞台へと。
この場で授与もおこなわれます。大賞
「タモドキの恋」ハカウチマリ
佳作
「夜想曲炎上」はやみかつとし
「消灯」砂場
迫水由紀賞
「秋の指」岸野那美
山下昇平賞
「夜をひさぐ」金子みづは
佐藤弓生賞
「燭手の一族」中島晴よりくわしい、結果発表(選評もあり)はこちらを参照。
この場にいらしたのは、はやみかつとしさん、金子みづはさん、中島晴さんの3名でした。
中島晴さんは佐藤弓生さんからじかにトロフィーを授与されました。
そのあとは選考の過程から、入選は果たせなかったけれども、印象に残った作品が、選考に携わったみなさんから、語られます。
いよいよ、終演も間近、最後にcafe凛堂の迫水由季さんから、以下の作品が朗読されました。
大賞
「タモドキの恋」ハカウチマリ
佐藤弓生賞
「燭手の一族」中島晴
迫水由紀賞
「秋の指」岸野那美夜の帳が降りた西荻の不思議な空間にて、迫水さんの凛とした声とたたずまいによる朗読が響きわたります。場の締めにふさわしき光景。
これにて、すべての演目が無事終了。
ありがとうございます。みなさんのおかげで大盛会でした。
このあとの2次会では60名以上ではないかと思われるほどの大宴会になりました。
宴の場は混沌としていて、熱気もさめやらぬ興奮ぶりでした。
超短編の書き手から、歌人さん、詩人さん、長編作品を手がける方まで、多くのひとの交流が生まれ、参加されたみなさんにとっても、得るものが多い忘れられない会になったのではないか、と自負しております。
みなさん、本当にありがとうございました。
スタッフ:添田