ご来場ありがとうございました!(第67回西荻ブックマーク「『冬の本』と『わたしのブックストア』」)

第67回西荻ブックマーク

当初、予約数が少し足りずに心配していましたが、ふたをあけてみれば、当日の駆け込みが殺到し、マーレでは最多人数の43名!年齢層も20代からご年配の方までと幅広い客層となり、北條さんと島田さんの人気ぶりがうかがえました。
前半は、北條さんが、単独で著書である『わたしのブックストア』(アスペクト)について語られました。アスペクトさんと知り合いを介したつながりがあって、本屋さんのガイドブックを作りたいと出版社側から北條さんにお声がかかったということでした。タイトルについても興味深いお話をしてくださいました。自分がこれだ!と思ったタイトルはイマイチだったようで、「他のもだしてください」と言われたそうで、会場は笑いに包まれていました。書名の『私の』これには3つの意味があるとのことで、1つ目は作者にとって、2つ目は掲載された本屋さんにとっての、そして3つ目は読者にとってのお気に入り、落ち着く本屋とのことでした。

東京の古本屋さんのガイドブックを作ろうという最初の企画が、新刊書店も入れたいとなって、更には、東京ではないお店も入れたいと2回くらい、企画が変更になったと語られました。
この本より少し前に発売された玄光社ムックの3冊のブックガイドについても少し述べられました。北條さんが一人で取材し、書かれたこの本は先のブックガイドとは違い、一人の視点で書かれたものであり、そういう意味でも毎年出るような雑誌の「本」特集とは違った味、面白いものにしたいと。
TBSラジオで永江朗氏がこの本をとりあげてくれた経緯についても語られました。書店の巨大化、ネット販売の増大でまちの書店ではますます本が売れなくなった現実。ここからこぼれおちるものを大事にしたいと。そして本屋さんの本がブームでもあるということでとりあげられたようでした。
次に語られたのが、どのお店をどういうふうに取材するか、そのコンセプトでした。店の紹介と同時にどういうひとがやっているのかを書きたい。一つのお店で2500字~3000字で、そんなに深く掘り下げると、『女子の古本屋』になってしまうと。この本の取材で、必ずどのお店でもでてきた話が儲かっていないというのは、厳しい現実を照らし出してもいる。そういったネガティブな話、書けないネタの中に大事なことが入っているといわれたら、ますます聞きたくなってしまうのだが。この本の取材を通して、北条さんは改めて自分には本屋はできないと感じたそうです。
一番心に残ったのが次のお話でした。結果的にこういうお店になった。自分だけの考えというより、常連のお客さんや、知り合いの意見でお店が作られていく。店の特色を常連さんたちが作っていく。聞く耳を持っている人がいいお店を作っているとおっしゃられていました。1日に4軒も取材したことがあったり、1日の睡眠時間が2時間しかない10月後半が一番きつかったと、ちょっぴり苦労話もうちあけてくださいました。
後半は夏葉社の島田さんと『冬の本』について楽しく語ってくださいました。
最初に島田さんから「無人島本をやりたい」といわれ、北條さんはダメだしされたそうです。
判型は岩波少年文庫のサイズにしようと最初に決めていて、本を出す時期も12月ということだけ、確定していて、タイトルが難航します。雨の日、電車で読みたい本などいくつかでてきて、やっと春の本はどうかとなり、12月なんだから冬にしようと決定しました。「冬の本」という言葉の響きがいいと北條さんも太鼓判を押しました。単なる冬の本の紹介というのではなく、書き手にとっての冬にまつわる本の想い出をさらけだしてほしいというコンセプトだったからこそ、84人もの書き手が集まったようにも思いました。
この本の装丁は和田誠氏。ウィリアム・モリスみたいな感じでとイラストを依頼したのに、出来上がってみると全然違ったという話には、驚きました。それは今の装丁がすごくぴったりだからです。
この本にまつわる大変だったというお話もどれも興味深く、しかも面白かったのですが、特に島田さんの原稿料を84人もの人に払う為、銀行のATMを1台独占しての入金地獄などはこれまた、会場を笑いの渦に包み込んでいました。
最後にお二人から本のプレゼントがあって、終了となりました。

(ますく堂 増田)

【2013/1/29追記】文中にトークの内容および事実と異なる記述がありましたので、訂正いたしました。北條さまならびに関係者の方々に、ご迷惑かけてしまい、たいへん申し訳ございませんでした。

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